研究実績の概要 |
本年度は、研究課題「数論的位相幾何学の深化と新展開」に関して次の研究成果を挙げた。 まず、数論的曲線の幾何学的モデルとしてDeningerにより提起されている3次元葉層力学系について以下の研究結果を得た。 1. 数体におけるヒルベルトの相互律の幾何学的類似を示した。これは、Deningerにより提出された問題に解答を与えたものである。そのために、滑らかな多様体におけるDeligneコホモロジーの理論とその積分論を用いた。2. 3次元葉層力学系の構造定理を示し、分類を与えた。分類の各タイプについて、具体例も与えた。Deningerプログラムにおいて3次元葉層力学系の実例が円周上の曲面束の束葉層と懸垂流以外には知られていなかったので、我々の結果はDeningerプログラムにおいて有益であると考えられる。 これらの成果を論文にまとめ、現在投稿中である。これについて、米国の国際会議で招待講演を行った。国内のセミナーでも講演した。 次に, 研究代表者による数論的位相幾何学に基づき、Minhyong Kim氏が近年、数論的Chern-Simons理論を創始したが、この理論の基礎づけについても位相的場の理論の類似という視点から基礎的な成果を得た。現在、論文を執筆中である。 また、以前出版した数論的位相幾何学の本(洋書)の改訂版を執筆している。合わせて、数体の整数環のエタールコホモロジーとガロア群に関する新しい本(洋書)も執筆中である。
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