研究実績の概要 |
結び目と素数の類似に基づき, 3次元幾何学と数論の横断的研究-数論的位相幾何学-を行っている. 過去数年は, 数論的位相幾何学の精密化や数理物理との関係について研究を行っている. (1) Minhyong Kimによる数論的Chern-Simons理論について, 基礎付け的な結果を得た. すなわち, ゲージ群が有限群の場合(Dijkgraaf-Witten理論)に, 2+1次元位相的場理論の構造の数論的な類似(数論的前量子化束, 数論的量子空間, 数論的Dijikgraaf-Witten分配関数)の構成, 種々の関手的性質, 張り合わせ公式を示し, 数論的Dijkgraaf-Witten理論の基礎付けを与えた. これについて論文(平野光, Junheyong Kimとの共著)が出版され, 国内外の研究集会で講演を行った. 2023年3月,スコットランド, エジンバラのICMSにおいて, 研究集会「Gauge Fields in Arithmetic, Topology and Physics」を主催した. また, 結び目群の表現について, Galois表現に対する随伴Selmerの類似物を導入し, その捩れ性や代数的L関数に関する考察を行った論文(北山貴裕, 丹下稜斗, 寺嶋郁二との共著)が出版された. (2) 2次元共形場理論とメタプレクティック理論の類似性について, 特にSegal-Witten相互律と久保田の相互律の類似性に関して考察を行った. (3) 数論的位相幾何学の精密化について, Deningerの葉層力学系に関して基礎的な考察を行った.2023年8月, Research Fellowとしてドイツのミュンスター大学に1か月滞在し, セミナー講演を行った. (4) 著書「Knots and Primes -- An Introduction to Arithmetic Topology」の改訂拡大第2版版を著した. また, 数論的位相幾何学の基礎に関する著書も執筆している.
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