研究課題/領域番号 |
17H02845
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
三松 佳彦 中央大学, 理工学部, 教授 (70190725)
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研究分担者 |
高倉 樹 中央大学, 理工学部, 教授 (30268974)
三好 重明 中央大学, 理工学部, 教授 (60166212)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 葉層構造 / シンプレクティック構造 / 複素構造 / Engel 構造 / 接触構造 / turbulization / Anosov 流 |
研究実績の概要 |
研究上の大きな進展は3つある。 1)4次元多様体上の Engel 構造の研究に大きな進展があった。Engel 構造の構成法として接触構造の prolongation と、3次元 Lorenz 多様体からの Lorenz prolongation が知られていたが、更に幾何学的量子化を用いた方法も見出し、また、2次元 Riemann 曲面から3次元 Lorenz 多様体を構成する方法を整理し、その Lorenz prolongation を 研究して、得られるEngel 構造と元の曲面の幾何との関連を導き、Engel 構造の幾何学の基礎を大きく確立した。またEngel 構造の力学的性質を定式化し、幾何的研究をもとにこの力学的構造の研究を展開した。 2)5次元球面上の symplectic 葉層の構成に関連して、尖点特異点の Milnor fibre に絶対値モーメント写像の亜種をうまく定義することができた。これが種数1のLefschetz fibration を与えると思われるがそこは証明がまだ完了していない。ただし、予定される特異点の状況とその周りのモノドロミーの解析はある程度進んだ。これにより、K3 曲面とVII型Hirzebruch-Inoue曲面の関連が複素代数幾何では見えない方向から見え始めることとなった。特に楕円曲面の微分トポロジーについては専門家である上正明氏(京都大学)に2度ほど講演をお願いして研究組織内の理解を高めたが、これが大きな研究基盤ととなった。 3)4次元多様体上の2次元葉層の turbulization の研究を再開し、幾何学的構成がまだなされていない場合(コホモロジーの計算)の整理・分析が完了し、また、構成されているものについて、その構成を測地流によるイソトピーの特異極限としてみなせることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来、Anosov 流に付随する3次元接触構造の凸性を研究する予定であったが、その前にEngel 構造の研究の方が進み始めてしまい、H29年度の研究計画としてはこの部分が十分には進まなかった。一方、その代わりに Engel 構造で得られた研究成果は極めて大きいものであり、本研究:3,4,5次元多様体上の平面場、幾何構造の研究としては十二分な進展がったといえる。 また、Anosov 流に由来する接触構造を境界に持つ尖点特異点の Milnor fibre に関しては、連携研究者の森淳秀らとともに位相的な研究を進め、粕谷直彦による境界の接触構造自体の研究とともに境界における円周への写像を全体からの円板への写像に拡張するかどうかの研究へと発展している。この部分は現在進展最中であり、2018年度へ向けた重要な課題として残っている。この辺りの研究が急速に進めば、symplectic 葉層の構成理論が7次元まで拡張することも期待されていたが、そこまでは2017年度内には進まなかった。 葉層構造全般に関してはホモトピー論、特に Mather-Thurston 理論を理解するための 国際研究集会 BGamma School III を開催し、その上で更に4次元多様体上の2次元葉層の研究の進展につなげることができた。これも2018年度に引き続き細部まで研究を続けて行くことになるが、かなりの見通しが開ける段階まで2017年度内に進めたので、当初の予定から見ても十二分な成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度の研究計画で殆ど遂行できなかったAnosov 流に付随する3次元接触構造の凸性と接触構造のホモロジー論の問題は、2018年度に引き続き行う。特に、2018年度には Morse Novikov homology の専門家である Andrei Pajitnov 氏が来日し、研究打合せの機会を持てるので、その折に研究を再開する。保体積 Legendre 流の局所構造の複雑性に関しては、代表者が常に継続して研究を続けているので、その部分は、研究の展開のための大きな素地となる筈である。 一方、複素曲面、特に楕円曲面の微分トポロジーを2017年度から研究に積極的に取り込むことにした成果が尖点特異点の Milnor fibre に Lefschetz fibration を構成するという研究の方向性を見いださせた。2018年度にはこの方向性を推し進めて、存在・非存在をはっきりさせることがまずは必要である。存在すれば、多くの重要な研究すべきテーマがすぐに従う。一方、非存在が確認された場合は、異種の K3 曲面を構成していることになるので、やはり多くの微分位相的問題を提供することとなるが、その場合、一度研究すべきテーマを整理する必要がある。 4次元多様体上の葉層構造については、2017年度の成果が極めて良い方向に向いているので、このまま推進していけばよいと考える。
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