研究課題/領域番号 |
17H02846
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
桑江 一洋 福岡大学, 理学部, 教授 (80243814)
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研究分担者 |
塩谷 隆 東北大学, 理学研究科, 教授 (90235507)
太田 慎一 大阪大学, 理学研究科, 教授 (00372558)
桑田 和正 東北大学, 理学研究科, 教授 (30432032)
石渡 聡 山形大学, 理学部, 准教授 (70375393)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マルコフ過程 / ディリクレ形式 / スペクトル半径 / ラプラシアン / 最適輸送理論 / RCD空間 / 同径過程 / リーマン多様体 |
研究実績の概要 |
桑江は桑田とRCD*(K,N)空間上の参照点に関する条件下で同径過程の半マルチンゲール表現を得た。また中国科学院Xiangdong Li 教授と共同で重み付きラプラシアンに関するCD(K,m)条件でmが1以下の場合に新しい形のラプラシアン比定理を得た。さらにワシントン大学教授Zhen-Qing Chen 氏と熊本大学工学部教授・金大弘氏と超縮小性条件下でのファイマン・カッツ半群のスペクトル半径のLp-独立性について余分な条件を外すことに成功した。塩谷は測度距離空間上で,その等周可能輪郭がある関数以上ならば,観察可能分散がその関数から決まる定数以下となることを示し,等号成立条件を求めた.これはChengの最大直径定理およびCheeger Gromollの分割定理の一種の一般化となっている。 桑田はRCD空間上の確率解析・幾何解析として,無限次元スペクトルギャップ不等式の剛性定理,W-エントロピーの熱分布に沿った単調性の剛性定理,ブラウン運動の動径過程の解析等について,細部を整理した。また広いクラスの劣リーマン多様体上で,一般化された曲率次元条件の一般化に基づく幾何解析を展開した。 太田と桑田はNicola Gigli氏(SISSA),Christian Ketterer氏(Toronto大学)との研究(リーマン的曲率次元条件を満たす測度距離空間が最小の第一固有値を持つ場合の剛性定理)を完成させ、論文を発表した。また,距離空間上の凸関数の勾配流の研究を進め、CAT(0)空間上の準凸関数の勾配曲線の弧長の有限性に関する論文を発表した。 石渡は岡山大学の河備浩司氏,難波隆弥氏と共同で,ベキ零被覆グラフ上の非対称ランダム・ウォークの長時間漸近挙動の研究を行い、適切な条件のもとで半群の収束である中心極限定理を証明した。また,より精密な Invariance principle も証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RCD空間上の同径過程の半マルチンゲール表現は完全に計画通りに研究が進展したので初年度の主たる研究目標は達成された。桑江自身のそれ以外の研究計画は部分的には進展しているが、当初の研究計画の記載にはない「重みつきリーマン多様体上の重み付きラプラシアンの比較定理」に関する研究成果が予想外の早さで進展しはじめたので、現在これに集中的に取り組んでいる。また太田と桑田はNicola Gigli氏(SISSA)、Christian Ketterer氏(Toronto大学)との共同研究(リーマン的曲率次元条件を満たす測度距離空間が最小の第一固有値を持つ場合の剛性定理)を完成させ、予想以上の勢いて研究を進展させている。石渡もベキ零被覆グラフ上の非対称ランダム・ウォークの長時間漸近挙動の研究を順調に進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
RCD空間上の同径過程の半マルチンゲール表現が達成されたので,その結果を踏まえて、30年度は曲率の下限が関数Kの場合のラプラシアンの比較定理の導出とその帰結としての同径過程の半マルチンゲール表現定理を目標にしている。また重み付きラプラシアンに関するCD(K,m)条件でmが1以下の場合のラプラシアンの比較定理に基づいて、中国科学院のXiangdong Li 教授と共同で、重み付きラプラシアンに関する調和関数のYauの勾配評価、およびSchoen-Yauの勾配評価,放物型Harnack不等式の導出を計画している。またワシントン大学教授Zhen-Qing Chen 氏と熊本大学工学部教授・金大弘氏とともに超縮小性の条件下でのファイマン・カッツ半群のスペクトル半径だけでなく、スペクトルの全体のLp独立性の導出も計画している。これはユークリッド空間上のポテンシャルだけの単純なシュレディンガー作用素の場合に知られているがリーマン多様体を含む形で一般化されたファイマン・カッツ半群ではまだ証明されているいない予想である。
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