研究課題/領域番号 |
17H02847
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須川 敏幸 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (30235858)
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研究分担者 |
志賀 啓成 東京工業大学, 理学院, 教授 (10154189)
高橋 淳也 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (10361156)
相川 弘明 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20137889)
柳原 宏 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30200538)
船野 敬 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (40614144)
坂口 茂 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50215620)
松崎 克彦 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80222298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 双曲計量 / ラプラシアン / 擬等角拡張 / 双曲距離 |
研究実績の概要 |
研究代表者須川は基礎的な研究の一環として主に双曲距離の具体的な評価に取り組んだ.これは蘇州大学の張坦然氏およびTurku大学のMatti Vuorinen氏との共同研究によるもので,リーマン球面から有限個の点を取り除いて得られる領域の双曲距離の具体的な評価を目標として研究を行った.既に予備的な結果はこれまでに得られていたが,それは取り除いた点の相互の距離の最小値に依存する評価であったため,点の個数が多くなると一様には適用できないものであった.一方,任意の平面領域の双曲計量はこのような有限穴あき球面の双曲計量の点を増やしていった時の広義一様収束極限となっていることが知られており,そのような観点からは点の個数に依存しない評価が望ましい.そのため,今回はモジュラスの大きなカラー領域(円環)を察知する方法を導入し,さらに領域のある種の分割およびそのグラフ構造を用いて点の個数などには全くよらない一様評価を得るアイデアを得た.現在は論文準備中である. さらにMark Elin氏,David Shoikhet氏との共同研究においては,単位円板からそれ自身への連続な解析函数半群を考察し,Loewner方程式の手法を用いることによりそのレゾルベントに関する新しい擬等角拡張性条件を見出すなど,重要な成果が得られた(論文投稿中). これ以外にも幾何学的函数論やSchurアルゴリズムを用いた単位円板上の函数の解析などいくつか関連する研究を行った. そのほか,船野はラプラシアンの固有函数の値分布を研究し,坂口は平均曲率方程式の半連続粘性解の強比較定理を新しい方法で証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
楕円型作用素の研究の一環として,双曲計量や関連する問題の解析が研究計画に概ね沿う形で進められたほか,研究分担者によってラプラシアンの固有値問題や曲率に関連する幾何的・解析的問題の研究が行われるなど,いくつかの成果が順調に得られつつある.また,単位円板上の解析函数のなす連続半群の研究にLoewner方程式の理論を適用することにより新たな擬等角写像とつながりが見出され,当初の計画にはなかったような成果も生まれている.一方で,錐特異性を持つ双曲計量の存在や一意性に関しては今のところはまだ目立った成果が出ていない.このように計画の進行の多少のばらつきはあるが,概ね研究が順調に進んでいると言ってよいであろう.
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今後の研究の推進方策 |
錐計量の存在や一意性の問題は一意化によって究極的には単位円板の場合に帰着すると考えられる.したがって単位円板からそれ自身への正則函数の挙動を深く調べることが重要であり,Schurによるアイデアの応用など,これまで得られた知見を活かしながら問題解決への道筋を探る.より具体的には,これまで通り定例の内部セミナー,月に一度の東北複素解析セミナーに加え,適宜,国内外のワークショップや研究集会に出席するなどして研究交流をはかり,新たなアイデアや最新情報を得て本研究の推進に役立てたい.さらに,今年度は博士後期課程学生だけでも4名指導することになっており,学位論文指導も兼ねて,本課題に関連する問題を与えて研究を進めていきたいと考えている.
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