望月と Kedlaya の理論により、近年不確定特異点を持つホロノミー D-加群の理論は劇的な発展を遂げた。特に D'Agnolo と柏原は、不確定特異点を持つホロノミー D-加群にたいするリーマンヒルベルト対応を確立した。一方フーリエ変換は D-加群の理論で基本的な対象だが、高次元の場合の詳しい性質は、ほとんど何も解明されていない。我々は D'Agnolo と柏原のリーマンヒルベルト対応を用いて、正則とは限らないより一般のホロノミー D-加群のフーリエ変換の詳しい性質を解明した。特にその特異集合を具体的に記述し、それに沿う不確定度(指数因子)が元のホロノミー D-加群の特性多様体と指数因子を用いて記述できることを示した。これは、約30年前の Brylinski の結果を大きく拡張するものである。この研究のために、我々は有理型関数の無限遠点や不確定点における特異性について、基礎的な研究を行った。さらに、Deligne の消滅サイクル函手を有理型関数の場合に拡張し、その函手的性質を調べた。また副産物として、この新しい函手と混合ホッジ加群の理論などを用いて、有理型関数のミルナーモノドロミーのジョルダン標準型などの公式が得られた。関連して、正則関数にたいする Bernstein-佐藤多項式(b-関数)の理論を、有理型関数にたいするものに拡張した。我々は、この一般化された b-関数の根の有理性を示し、さらに柏原-Malgrange 型定理(b-関数の根とミルナーモノドロミーの固有値の対応)や乗法的イデアル層の jumping number などについて、正則関数の場合と同様の結果を証明した。 Denef-Loeser が導入した位相的ゼータ関数についてのモノドロミー予想についても研究し、高次元の場合でも多くの場合に予想が正しいことを示した。
|