研究実績の概要 |
本研究課題では物理学, 工学に現れる非線形分散型方程式に対し, ソリトンおよび散乱という立場から研究を行っている. 研究代表者の瀬片は, Jason Murphy氏および研究分担者の眞崎氏とともに, デルタポテンシャルを持つ非線形シュレディンガー方程式に対し, 初期値が十分小さいならば時刻無限大で解が線形方程式の解に位相の修正を加えたものに漸近すること(修正散乱)を証明した. 方程式にポテンシャルがあるため非線形散乱に有効なフーリエ変換を用いることが出来ないが, デルタポテンシャルに付随した一般化フーリエ変換を用いることによりこの困難を克服し, 修正散乱を証明することに成功した. 研究分担者の眞崎は宮崎隼人氏とともに, 必ずしも多項式とは限らない臨界斉次非線形項をもつシュレディンガー方程式に対して, 先行結果で扱われていなかった絶対値型非線形項の成分を含む場合に漸近挙動に関するいくつかの否定的な結果を得た. 研究分担者の前田は, 離散シュレディンガー方程式に対して準周期解を構成し, 初期値が十分小さければ解は準周期解と散乱波に分解されるということをダルブーの定理などの解析力学の手法を用いて示した. また, 自己依存するコインをもつ量子ウォークの散乱, 逆散乱についても考察した. 研究分担者の生駒は, 2つの成分について質量制約条件を課したポテンシャル項を含むエネルギー汎関数に対する最小化問題を考察し, ポテンシャル項に対する条件をこれまで得られていたものより一般化することに成功した. 研究分担者の高田は分散性を伴う流体の方程式のひとつであるBoussinesq 方程式の初期値問題に対して, 回転と安定成層の影響を考慮した場合, および安定成層のみの影響を考慮した場合に最適な線形分散型評価の導出,および非線形問題の時間大域的適切性の証明を行った.
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今後の研究の推進方策 |
吸引的なポテンシャルを持つ非線形シュレディンガー方程式の解の長時間挙動に関しては, 一般化フーリエ変換などを用いたアプローチを試みる. また, 分散型方程式を中心とする偏微分方程式に関する2~3日間程度の研究集会を開催し, 国内外の偏微分方程式, 数値解析 , 数理物理学の研究者と研究交流を図ることで研究を推進させる.
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