研究課題
2020年度に開催を予定していた国際研究集会は,コロナウィルス感染拡大のため延期せざるを得なかった.そこで,2020年度の直接経費のうち340万円を二度繰り越したが,2022年度も会場が使用できなかったので,予定していた国際研究集会の開催は断念した.その代わりに,Online Seminar on Nonlinear Water Waves and Related Topics をオンラインで開催し,2022年度の年度末には少人数の国際研究集会 Recent Advances in Nonlinear Water Waves を東京大学で開催した.この実績報告書では,2020年度と2022年度の研究実績等を併せて報告する.本研究の目的は,海洋における大振幅波動の本質(非線形性と分散性)をとらえた数理モデルを導出し,その数理解析を行うことである.研究成果は,発表論文19件(査読有16件,国際共著10件,オープンアクセス3件),学会発表33件(招待講演10件,国際講演11件)で公表されている.研究内容の概要は以下のとおりである.1. 数学モデル:初期値問題としての自由境界値問題の適切性と磯部-柿沼モデルの孤立波解の性質(井口),物体・地形と流れの相互作用によって形成される波(片岡),長波-短波共鳴相互作用方程式の拡張(丸野),ローグ波の相互作用(太田),KP-II方程式のソリトン解の線形安定性(水町)を理論的に調べた.2. 内部波:一様な成層流体中を伝播する内部波(片岡),界面波の安定性(村重),表面波・内部波の共存(柿沼)を,理論・数値的に調べた.3. 大振幅・非線形波動の数値計算:,水面波の安定性(村重),津波(柿沼),船首砕波(日野)を数値的に調べ,一般の境界条件に対する自己適合移動格子スキームの開発を行なった(丸野).
2: おおむね順調に進展している
予定していた国際研究集会はコロナウィルス感染拡大のため開催できなかったが,その代わりにオンラインセミナーと少人数の国際研究集会を開催できた.研究については,上記の「研究実績の概要」でまとめたように,計画通りに進められ,その成果はトップジャーナルに位置づけられる学術雑誌の論文や学会で公表された.本研究の最終目標である「海洋における大振幅波動の本質(非線形性と分散性)をとらえた数理モデルの導出しとその数理解析」はある程度達成されたと考えられる.以上の理由により「おおむね順調に進展していいる」と判断した.
本研究の最終的な目標は,「海洋における振幅の大きな表面波と内部波の解析に適した新しい理論的・数値的近似法の提案」である.これまでの4年間の研究により,海洋波の数理モデルの導出と解析,大振幅・非線形運動の特徴をとらえるための数値計算法の開発については予定通りの成果が得られた.今後は,実施計画にしたがいさらに研究を進め,既存の手法では解くことができなかった問題の解決を試みる.具体的な研究内容を以下にまとめる.1. 水面波: (1) 磯部-柿沼モデルの孤立波解とHamilton構造を調べる.(2) シアー流(水平方向の流速が水深方向に変化する流れ)の上を伝播する水面波の安定性を調べる.(3) ローグ波(突発的に発生する巨大な波)に対応する解を持つ可積分系モデルの解析を行う.2. 内部波:(1) 連続的な密度成層により発生する内部波(内部波ビーム)の数理モデルの妥当性を,実験や数値計算の結果と比較することにより検証する.(2) 不連続な密度成層の界面で発生する内部波の安定性,特にKelvin-Helmholtz タイプの不安定性を調べる.3. 数値計算法: (1) 複素解析の手法(特に等角写像)を用いて開発した数値計算法を大振幅運動の安定性解析に適用し,その有効性を検討する.(2) 可積分系と離散微分幾何学の手法を用いて,解の構造を保存する計算方法(自己適合移動格子スキーム)を開発する.(3) 津波の問題に磯部-柿沼モデルを適用し,数値計算によりその有効性を検討する.(4) 粘性と渦の影響を調べるために,Navier-Stokes 方程式の直接計算法を開発し,特に砕波現象の解析を行う.
コロナウイルス感染拡大のため予定していた国際研究集会は開催できなかったが,上記のオンラインセミナーと少人数の国際研究集会を開催した.
すべて 2023 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 10件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 11件、 招待講演 10件) 備考 (2件)
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