研究課題/領域番号 |
17H02859
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢ヶ崎 一幸 京都大学, 情報学研究科, 教授 (40200472)
|
研究分担者 |
伊藤 秀一 神奈川大学, 工学部, 教授 (90159905)
名和 範人 明治大学, 理工学部, 専任教授 (90218066)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 力学系 / 可積分性 / 偏微分方程式 / ソリトン / 逆散乱法 / 結合振動子系 / 最適制御 / 時間遅れ系 |
研究実績の概要 |
応用分野で現れる多様な数理モデルに対して,力学系理論に基づく新しい理論の構築を目指して以下の研究を行った. ・あるクラスの非線形連立偏微分方程式を取りあげ,反転対称性をもつ常微分方程式系におけるサドル型のホモクリニック軌道に対応したパルス解に対して,サドル・ノード分岐,トランスクリティカル分岐,ピッチフォーク分岐が起こることを証明するための手法を提案した.特に,分岐が起こる際,ホモクリニック軌道まわりの変分方程式が微分ガロア理論の意味で可積分であるとは限らず,また,どのような場合に可積分となるかを明らかにした.さらに,その理論の有用性を,数値的に孤立波のスペクトル安定性を決定するための手法を提案して検証した. ・複雑なネットワークの数理モデルを与える,複数のグラフに依存する結合振動子系を取りあげ,連続極限の手法の有効性を数学的に証明した.特に,結合振動系と連続極限方程式の解の安定性についての関係性を明らかにした.また,複数の自由振動数を有する蔵本モデルに対して適用し,数値シミュレーションの結果と比較するなどして理論結果の有効性および有用性を確認した. ・感染症の数理モデルであるSIR系およびSEIR系を取りあげ,力学系理論を用いて最適制御を適用し,最適制御により感染症の流行の沈静化が可能であることを明らかにした.また,時間遅れ系フィードバックを受ける亜臨界ホップ分岐の標準形を取りあげ,小さな初期関数に対しても解が有限時間爆発する場合のあることを示し,その十分条件を与えた.さらに,数値シミュレーションを行い,理論結果の有効性を数値的にも確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応用分野で現れる多様な数理モデルに対して,力学系理論に基づく新しい理論の構築を目指して以下の研究成果を得ている. ・摂動を受ける無限次元ハミルトン系における相対平衡解の分岐および安定性に関する手法の確立;反転対称系におけるサドル型平衡点に対するホモクリニック軌道のサドル・ノード分岐,トランスクリティカル分岐およびピッチフォーク分岐現象の解明;Sobolevの臨界指数をもつ連立楕円型非線形偏微分方程式における球対称正値解のトランスクリティカル分岐およびピッチフォーク分岐の解析;余次元2の分岐であるfold・Hopf分岐および2重Hopf分岐の標準形に対するBogoyavlenskijの意味での非可積分性の証明;摂動系における周期軌道,ホモクリニック軌道,第一積分および可換なベクトル場の保存についての理論の構築;複数のグラフに依存する結合振動子系に対する連続極限の有効性の数学的証明;平衡点の中心多様体に対する数値計算手法の提案;遅れフィードバック制御を受ける非線形系における有限時間爆発解の存在についての数学的証明;感染症数理モデルSIR系およびSEIR系の最適制御 また,最終的な結果は得られていないものの,以下の研究を行っている. ・サドル・センター型の平衡点を有する反転可能系に対してカオス軌道の存在を証明するための方法の確立および非可積分性との関連性の解明;光ファイバ・センサのひとつであるファイバ・ブラッグ・グレーティングのモデルを含む非線形偏微分方程式におけるパルス波の安定性の決定;自明な平衡点をもち,確率的な摂動を受ける系に対する,確率1でのカオス軌道の存在を証明するための手法の提案;非線形シュレディンガー方程式における高周波数振動成分へのエネルギー遷移現象に対する力学系理論からの解析
|
今後の研究の推進方策 |
応用分野で現れる多様な数理モデルに対して,力学系理論に基づく新しい理論の構築を目指して,最終的な結果が得られていない問題の解決に努めるとともに,以下の研究を行う. ・力学系の非可積分性に関する未解決問題の解決のため,非可積分性判定のための新たな理論を構築する.特に,Bogoyavlenskij可積分な系の摂動系の非可積分性判定のための手法を提案する.また,長い間未解決となっている,主質量の質量比が任意の質量比の場合に対する古典力学の制限3体問題の非可積分性判定の問題に対する解答を与える.さらに,共鳴度が2のPoincare-Dulac標準形をもつ力学系の非可積分性を明らかにする. ・KdV方程式などの可積分偏微分方程式に対して逆散乱法を適用する際に重要な役割を果たす,変数係数線形系Zakharov-Shabat系を取りあげ,どのようなポテンシャルに対して微分ガロア理論の意味で可積分となるのかを明らかにする.
|