研究課題/領域番号 |
17H02864
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 啓一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00503880)
|
研究分担者 |
諏訪 雄大 京都産業大学, 理学部, 准教授 (40610811)
勝田 哲 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50611034)
守屋 尭 国立天文台, 科学研究部, 助教 (90779547)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 理論天文学 / 光赤外天文学 / 多波長天文学 / 超新星爆発 / 恒星進化 |
研究実績の概要 |
天文学の基盤をなす恒星進化研究に変革の時が訪れている。大質量星の生涯最期の爆発である超新星の観測を通し、大質量星の多くが終末期最後の100年の間に劇的な進化を遂げるという新描像が確立されつつある。超新星爆発機構の理論研究からは、さらに短い時間スケールで起こる、動的・突発的現象を含んだ進化過程の重要性が認識されつつある。本課題では、異なる分野の専門家の協力のもと、以下を遂行する。(1)爆発直後の観測から恒星最期の一年に迫る。(2)超新星爆発機構の理論から恒星最期の一年に迫る。(3)親星、質量放出、超新星の相互の関係の確立による恒星終末期の包括的理解。 (1)に関して、理論・観測的に様々な進展があった。ガンマ線バーストに付随する超新星の早期分光と輻射計算による準光速成分の発見(前田)、超初期分光観測の推進(前田)、爆発直後からの光度曲線観測・解析による超新星親星の超近傍に存在する星周物質の発見(守屋)のほか、ALMA望遠鏡による爆発直後の超新星の観測提案も引き続き採択された(PI:前田)。爆発直前の質量放出により作られる星周物質の性質を解明するための光度曲線や偏光理論モデルを提出(前田・守屋)したほか、超新星放射の多波長理論計算を推進した(前田)。 (2)に関して、超新星爆発における元素合成の現象論的モデルを構築し爆発機構への新しい制限を見出した(諏訪・前田)。爆発機構の理解を目指し超新星残骸のX線観測を推進した(勝田)。 (3)に関して、超新星の後期スペクトル解析を通して親星の初期質量を見積もる新しい手法を適用、Ic型とIb/IIb型で初期質量に有意な違いがあることを見出した(前田)。これは、大質量星終末期の質量放出過程に迫る新しい情報であり、上記(1)(2)と組み合わせ恒星終末期の包括的理解につながると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特に特筆すべき成果として、ガンマ線バーストに付随する超新星の爆発直後からの分光観測と輻射輸送理論計算を通し、光速の30%以上に達する超高速成分の発見があげられる(Izzo, de Ugarte Postigo, Maeda et al. 2019, Nature)。また、II型超新星の爆発直後からの系統的な撮像観測と光度曲線モデルを通し、超新星周囲に高密度星周物質が普遍的に存在することを示唆した(Forster, Moriya et al. 2018, Nature Astronomy)。これら二件の研究成果はどちらも、超新星爆発直後の超初期観測とその理論解釈に基づいたものである。また、後期スペクトルを用いて親星の初期質量を求める手法を提案し、これをIIb/Ib/Ic型に適用した結果、Ic型超新星の親星がIIb/Ib型超新星よりも有意に大質量であることを示した。大質量終末期の質量放出過程を解明する鍵となることが期待される(Fang, Maeda et al. 2019, Nature Astronomy)。 これらの特に特筆すべき成果の他にも、様々なインパクトの高い成果が得られた。また、各分担者間の共同研究も進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)観測研究としては、ALMA望遠鏡、Gemini望遠鏡による観測を推進するほか、稼働を開始した京都大学3.8m望遠鏡を用いた爆発直後の超新星観測プログラムを策定・推進する。理論研究として、電波・X線における爆発直後の非熱放射の理論計算を推進する。 (2)超新星爆発の元素合成的特徴から爆発機構に制限をつける可能性をさらに追求する。特に、56Ni以外の元素生成について、数値計算を行う。また、超高輝度超新星やガンマ線バーストに伴う超新星など、特にエネルギーの大きい爆発現象を説明するうえで有力なモデルである、中心エンジンからのエネルギー駆動爆発モデルの三次元計算を行う。 (3)爆発直前の恒星終末期における時間依存・力学的進化の計算を完成させ、理論モデルを提出する。
|