研究課題/領域番号 |
17H02866
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 星間ガス / 多波長観測 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
本研究の主対象である,高銀緯(すなわち近傍)の星間ガス雲の多波長観測では,カメレオン分子雲領域のFermi衛星(GeVガンマ線)およびPlanck衛星・NANTEN2 望遠鏡・Parkes GASSサーベイ(電波)を用いた定量化を進めた。ガンマ線を星間ガスのロバストなトレーサーとして用いることで,Orion分子雲などで電波・サブミリ波で報告されていた非線形性(Roy et al. 2013)と類似の非線形性を見出した。ガンマ線データに基づいた解析を行うことで,従来多くの星間ガスの研究で見られた『HI雲のスピン温度が一定』という仮定によらない星間ガス・宇宙線の定量を行い,原著論文としてまとめて投稿した。また強いCO分子輝線の見られない原子雲領域の解析にも推し進めた。解析にあたってはOrion-Eridanus Superbubbleの影響を避けるため領域を適切に定義したうえで,全ガス柱密度(ガンマ線強度に比例)とダスト放射の間の非線形性やダスト温度依存性を詳細に見ており,その結果の一部を2018年のフェルミシンポジウムで報告・議論を行った。現在は論文として取りまとめている。 これらガンマ線による個々の領域の解析と相補的な研究として,ガンマ線バーストのX線残光を用いた全天(高銀緯領域)星間ガスの測定も進めている。先行研究(Willingale et al. 2013)に比べてガンマ線バーストの数を約2倍に増やし,ダストマップとしてPlanck衛星の全天マップを用いて解析を進めている。本研究課題のひな形であるMBM 53-55分子雲領域で見られたのと定性的に同じ傾向(ダスト温度依存性)を見出すことができ,系統誤差の評価を進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で述べたように,カメレオン分子雲領域の解析ではガスの柱密度とダスト放射の間の非線形性を露わに扱うことでHI雲のスピン温度の仮定によらない解析を進め,原著論文としてまとめて投稿した。近傍原子雲の解析やガンマ線バーストのX線残光を用いた全天(高銀緯領域)の星間ガスの評価はやや時間がかかっているようにも見えるが,前者は解析領域を適切に定義することでロバストな議論ができるようになり,後者はMBM 53-55分子雲で見られたのと定性的に同じ傾向(ダスト温度依存性)を見出すなど,論文化に向けて着実に研究を進めることができており,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主観測対象である高銀緯(すなわち近傍)星間ガス雲のうち,CO分子輝線の見られない原子雲領域の解析ではOrion-Eridanus Superbubbleの影響を避けるため領域を適切に定義したうえで,全ガス柱密度とダスト放射の間の非線形性やダスト温度依存性を詳細に見ており(2018年のフェルミシンポジウムで一部を報告), これを速やかに論文化する。その後はPegasus Loop領域の詳細解析(GALFA高分解能HIサーベイを利用)などを計画しており,これらを通じて近傍のガス密度分布を導出するとともに,ダスト放射-ガス密度比の較正の方法,ダスト放射とガス密度の間の非線形関係の検証,CO輝線強度と分子ガスの柱密度の比(いわゆるXco)の精度良い算出方法を確立させていく。合わせて近傍の宇宙線強度・スペクトルの議論も行う。 これらガンマ線による個々の領域の解析と相補的な研究として,ガンマ線バーストのX線残光を用いた全天(高銀緯領域)星間ガスの測定も進めている。MBM 53-55分子雲領域で見られたのと定性的に同じ傾向(ダスト温度依存性)を見出しており,系統誤差を評価したうえで本年度中に論文化して出版する。銀河面宇宙線加速源候補天体の解析も合わせてすすめる。
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