研究課題/領域番号 |
17H02867
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
長島 雅裕 文教大学, 教育学部, 教授 (20342628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 銀河形成 / 活動銀河核 / 宇宙の大構造 |
研究実績の概要 |
宇宙進化に基づく銀河の形成・進化の過程を明らかにするために、申請者らは、N体シミュレーションをベースにした準解析的銀河形成モデルを構築してきた。本研究のメインターゲットのひとつは、銀河中心に存在する超巨大ブラックホールの進化と、ブラックホールへのガスの降着により発現する活動銀河核の進化の理解である。申請者らにより開発してきた銀河形成モデルについて、特に銀河中心超巨大ブラックホールへのガスの降着過程について改良を行った。 ガスの降着は、銀河同士が激しく合体(メジャーマージャー)した際に起きると考えられている。これは、ガスの角運動量保存則により、非軸対称ポテンシャルが発達するような激しい合体が起きなければ、ブラックホール周辺領域までガスが落ちられないと考えられるためである。我々のモデルもメジャーマージャー時にガスが落ちると仮定しているが、その際、落ちるはずのガスは、速やかにブラックホール周辺まで落ち、その後は短いタイムスケールでブラックホール周辺から降着円盤を介してブラックホールに落ち込み、活動銀河核を発現すると仮定してきた。今回は、銀河スケールで分布するガスがそもそもブラックホール周辺領域まで落ちるタイムスケールを考慮し、それをモデル化することで、観測される活動銀河核の光度関数等を良く再現できることを示した。 また、同じモデルを用い、銀河の星形成率の関数としてHα輝線が放出されることを使って、その分布について調べた。Hα輝線天体の分布の非一様性は高く、相当の広視野のサーベイ観測を行わなければ、宇宙における平均的性質を得ることは困難であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの改良については順調に推移しており、活動銀河核の様々な特性について再現できるようになった。またその空間分布についても解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進める中で、Hα輝線天体についての研究がかなり進められそうな状態にあることがわかってきた。これは当初はあまり考慮していなかったが、基本的な観測量であるにもかかわらず、予備的な報告でも観測グループからは興味が寄せられる状況になっている。海外の他のグループもあまり手をつけておらず、予想外に重要であることが見えてきたため、銀河形成モデルの拡張の方向性として、活動銀河核に加え、Hα輝線天体についてもメインターゲットの一つとして研究を進めていきた。 我々が開発してきた銀河形成モデルは、銀河の様々な特性を包括的に取り扱うモデルであるため、同じモデルを用いても、どの部分に焦点を当てるかで一見異なる領域の研究を統一的に扱うことができる。これは、その特性を活かしたものである。
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