研究課題
前年度は、気象条件の急変により放球(打ち上げ)直前で延期となっていた。今年度は再びの挑戦となる。宇宙科学研究所相模原キャンパスで動作確認がおこなわれたゴンドラシステムは、一旦解体したうえで輸送し、大樹航空宇宙実験場(TARF)の組立室にて再びフルインテグレーションをおこなった。そして放球体制を整えることができた。しかし、シーズン中を通じて気象条件に恵まれることがなく、放球されなかった。しかしながら、放球準備作業を通じて地上で検証実験を繰り返し、ミニマムサクセス(電波源を指向して受信)、フルサクセス(VLBIフリンジ検出)、エキストラサクセス(基線変動補正)の機能確認をおこなうことができた。そのため、ミッションの当初の目的を達成するための機能を確認できたことは大きな成果であった。 同時に実験に参加する日本全国の電波望遠鏡ネットワーク (国立天文台水沢10m局、VERA水沢20m局、VERA入来20m局、茨城大学高萩32m局、大阪府立大学1.8m局、JAXA臼田10m局、JAXA大樹1.5m局)との間での干渉縞検出試験にも成功した。また、いくつかの小さな改良をおこなうことができた: (1) ゴンドラ構体を白色塗布し熱変形に対する懸念の緩和、(2) ゴンドラが想定外に高速回転した場合に対応できるPIVOTブレーキの追加とチャンバー動作試験、(3) スタートラッカーのチャンバー内撮影試験、(4) 姿勢制御系の高周波化 (10 → 20 Hz)、である。本年度での実験実施は叶わなかったが、実験システムを保存し、来年度の放球シーズンの機会に備えることとする。また、本実験のシステムについての学術論文が出版された。
3: やや遅れている
放球準備は整っていたが、気象条件に恵まれず、実験システムは放球されなかった。 しかしながら気球実験は気象条件に左右される可能性が想定されていたため、実験の延期はある程度仕方のないことと言える。今年度の準備作業を通じてシステムの健全性を再確認できたため、来年度の放球機会に備えることができる。
来年度の実験準備において、ふたたびシステムを分解しJAXA相模原キャンパスとTARFの間を輸送し、再び組み立てをすることは、システム再現の観点で新たなリスクを伴う。そのため、実験システムはそのままTARFに保管することとした。ゴンドラシステムは、Flight Readiness Reviewを通過した状態からリチウムイオン電池を抜いた状態で保存し、次年度の再起動時に問題が生じるリスクは小さくした。我々は、JAXA大気球委員会に再び実験提案を提出する予定である。地上VLBI網の各局代表者とも議論をおこなう。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Advances in Space Research
巻: 63 ページ: 779-793
10.1016/j.asr.2018.09.020