高強度レーザー場で真空を励起し、X線自由電子レーザー(XFEL)をプローブとして、真空複屈折・真空回折といったマクロな物理量として現れる真空偏極を探索した。SACLAのXFELと同期する0.6TWレーザーを補償光学系を用いて2μmまで集光し、新規開発したSi製のX線シェイパーを用いて低角度発散のXEFLを衝突点で約15μmに集光してヘッドオン衝突させて実験を行った。真空偏極によってX線が回折された場合にのみX線が検出されるようにスリットを設置し、レーザーのON/OFFによって観測されるX線量を比較した。真空偏極によって生じる有意なX線回折信号は観測されなかったが、量子電磁力学の予想に対し90%信頼区間で2.3×10^18まで迫る制限を与えた。これは通常の実光子同士の散乱を上回る感度であり、真空回折という新たな実験手法による初の結果である。
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