研究課題/領域番号 |
17H02886
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宗宮 健太郎 東京工業大学, 理学院, 准教授 (10582603)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 重力波 / 光バネ / パラメトリック増幅 / 中性子星連星 |
研究実績の概要 |
本研究は、中性子星連星合体など高周波の重力波発生を伴う天体イベントを観測するための、パラメトリック信号増幅技術の開発を目標としている。重力波望遠鏡はキロメートルスケールのレーザー干渉計で、光共振器を組み込んで信号を蓄積し、感度を向上している。通常はレーザー光が共振するような状態で運転されるが、共振から少しだけ離調すると、共振器を構成する複数の鏡がレーザーの輻射圧を介して相関をもち、光のバネが形成されることが知られている。ただ離調を用いても光バネの周波数は100ヘルツ程度になってしまうが、共振器内に非線形光学素子を組み込み、パラメトリック信号増幅させてやると、中性子星連星合体を観測できるキロヘルツ帯に光バネ周波数をシフトさせることができる。本研究では、その最先端技術の実験的実証のために、プロトタイプ干渉計を建設し、光バネ周波数のシフトの観測を目標に開発を続けている。
我々は、マイケルソン干渉計にシグナルリサイクリング(SR)鏡を組み込んだSR干渉計実験と、ファブリーペロー(FP)共振器実験の二つを並行して実施している。平成30年度には、SR干渉計において、出力の増幅の確認に成功し、FP共振器において、光バネの観測に成功している。平成31年度(令和元年度)は、実験をさらに進め、SR干渉計の制御方法の改良と、FP共振器へのパラメトリック増幅の導入を実施した。SR干渉計では、まだ光バネが観測できていないが、ファイバーアンプを導入し、パラメトリック増幅に必要なポンプ光量を大幅に増やすことに成功した。FP共振器実験では、光バネ周波数のシフトは確認できなかったが、レーザー発振が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シグナルリサイクリング(SR)干渉計実験ではいまだに光バネが観測できていない。ファブリーペロー(FP)共振器実験と比較すると、鏡の質量は同じで、光量が200倍ほど低いためと考えられたため、ファイバーアンプを用いて入射光量を増やしたが、SR共振器のゲインも低いため、まだ全体的なゲインが不足しているようである。これはFP共振器実験では生じない、SR干渉計実験特有の問題である。
FP共振器実験では、光バネは観測できたが、パラメトリック増幅を実施するとキャリア光パワーが増幅し、ポンプ光のパワーを吸収するため、信号増幅が制限されてしまうという問題が起きている。これはSR干渉計実験では回避される、FP共振器実験特有の問題である。
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今後の研究の推進方策 |
シグナルリサイクリング(SR)干渉計実験でゲインが足りない問題については、パラメトリック増幅を導入することで解決を図る。本来はパラメトリック増幅前に光バネを観測し、その周波数がシフトすることを実証する予定だったが、増幅前に観測できなかった光バネを観測することで信号増幅を実証することができると考える。
ファブリーペロー(FP)共振器実験でポンプ光パワーが不足している件については、ポンプ光を光共振器に入れ、効率よく非線形光学素子にパワーを送り続けることで解決しようと考えている。現在はシングルパスで、その一部のみがパラメトリック増幅に用いられている。ポンプ光が減少すると増幅に用いられるパワーが減る。ポンプ光で光共振器を組んでもキャリア光にパワーを吸収されることに変わりはないが、パラメトリック増幅に用いられていない光を再利用することで効率を上げ、問題を緩和するというわけである。
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