研究実績の概要 |
テストビームによる検出器性能の検証から、構造上の課題としての支持体及びギャップの構成方法に対して一応の結論を得た。すべてのスペクトロメータに共通する課題は、いかに空間の物質量を減らせるか、位置決定精度を高められるかにかかっている。 原子核乾板の特性として、高い位置分解能、トラッキングディテクターとしてのフィルムの物質量は他の検出器に比べて少なく、フィルムに対する改善点は少ない。 しかしながら、フィルム間の距離(磁場で曲げるための空間)を一定に保ちつつ、空間の物質量を減らす構造は検討の余地が多分にある。 プロポーザルでのデザインは、Rohacellと呼ばれる発泡スチロールの様な低密度物質を検討していたが、決して最適とは言えない。 構造的に平面性及び厚さの均一性が低く、スペクトロメータの性能を損なう要素となる。これまでのテスト実験結果を踏まえて最有力なガラスベースを用いて、空間は何も置かないる事を前提に検討した。ガラスはその熱膨張係数の小ささにおいても検出器の安定性に寄与する。同時に平面性を保つ強度も持つことから、ガラスベース+空気層という構造が最適であると結論付けた。 物理的な側面においては、B anomaly に代表される、第3世代でのレプトンユニバーサリティの破れに関心が寄せられている。タウニュートリノの荷電カレント反応は B anomaly のダイアグラムと非常に似ておりタウニュートリノを通したレプトンユニバーサリティの検証の可能性を検討してきた。統計的にはコライダー実験で得られている程度の寄与があれば、SHiPにおける10,000タウニュートリノ反応を通して検証可能である。
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