研究課題/領域番号 |
17H02888
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 修 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20377964)
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研究分担者 |
福田 努 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (10444390)
中平 武 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30378575)
渋谷 寛 東邦大学, 理学部, 教授 (40170922)
中家 剛 京都大学, 理学研究科, 教授 (50314175)
三角 尚治 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80408947)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ニュートリノ断面積 / ステライルニュートリノ / 電子ニュートリノ |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、鉄60㎏標的ECCでのニュートリノの反応の解析を進めた。ECC下流に設置されているINGRIDとECCとで飛跡の場所・角度・時間情報を使い、マッチングのとれた約1300本のミュー粒子候補を上流に向かってECC中で再構成された飛跡を追いかけ、上流の原子核乾板フィルムにつながらなくなった所を顕微鏡を用いて人の観察による詳細測定を行いニュートリノ反応点の確認を行っている。現在までに正ニュートリノ照射期間に蓄積された262本のミュー粒子候補の全解析、反ニュートリノ照射期間の1097本のミュー粒子候補の内の約300本の詳細確認が完了している。特にミュー候補がECC中から一本のみ発生している反応の反応点位置が鉄標的なのか原子核乾板フィルム中なのか顕微鏡詳細観察で決定した。これにより決定された鉄標的部のニュートリノ反応候補数は約400個である。この400個のニュートリノ反応からの全発生粒子に関してミュー粒子、陽子、パイ粒子同定を行った。それぞれの粒子別に多重度の分析、ニュートリノエネルギーによる依存性の分析を行っているところである。モンテカルロシミュレイションとの比較はよくあっている傾向である。まず、反ニュートリノのサンプルの詳細確認を完了し、ミューニュートリノのinclusiveな荷電カレント反応の断面積の算出を行う予定である。 また、電子ニュートリノ反応解析に向けて、鉄標的ECC中での低エネルギー電子の振る舞いを分析する目的で、2017年にCERNにて0.5,0.7,0.9,1.5 GeVの電子を鉄ECCに照射したサンプルの解析を始めた。現在までに全24フィルムのスキャンが終了し、スキャンデータの健全性の確認まで完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミューニュートリノ反応の解析が順調に進んでおり、荷電カレント反応断面積の算出に目途がついている。次年度、反ニュートリノのサンプルの顕微鏡詳細観測を完了し荷電カレント反応断面積を報告する。また、ECC中での電子シャワーの解析を進め、電子ニュートリノ候補を見つけることで電子ニュートリノ反応の断面積をミューニュートリノの反応断面積の比で出すことで系統誤差を減らした解析が期待できる。この際に反応点から出てくるサブGeVから1GeVから程度の電子に対する電子同定効率を実データで算出するためのCERNで電子ビームを照射したECCの解析に着手しており同定効率の算出が次年度早々に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、鉄60㎏ECCでの反ニュートリノサンプルの解析を終了する。これにより既に解析が終了している正ニュートリノとともに、それぞれミューニュートリノ荷電カレント反応の断面積算出を全統計で行う。また2017年にCERNにて1GeV近辺の電子を鉄ECCに照射したサンプルを解析することで電子同定効率をまとめる。同定効率が分かった状態でニュートリノ照射したECC中で電子シャワーを検出し、シャワーの起源が電子1本から始まるものに限定することでガンマ線事象による電子対生成事象(背景事象)を消す。電子が反応点から出ているものを電子ニュートリノ反応候補として、反応点から発生している粒子の陽子、パイ粒子同定を行う。反応から出てくる2次粒子の多重度の比較をミューニュートリノの反応の場合と比較が可能となる。また電子のエネルギーおよび他の荷電粒子の運動量から電子ニュートリノのエネルギーを算出する。期待される電子ニュートリノの反応数は10数例であるがECC中を十分な角度範囲で探索するために運動力学的なバイアスのないサンプルとなる。電子ニュートリノ反応検出のモンテカルロシミュレイションスタディーを進め電子ニュートリノの反応断面積の算出に目途をつける。
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