3He原子核による中性子吸収断面積のスピン依存性を用いた中性子偏極装置である3Heスピンフィルターを開発し、J-PARC物質生命科学実験施設のパルス中性子ビームラインBL04 ANNRIに導入した。偏極熱外中性子を用いた実験を行えるように整備した。ビーム進行方向と垂直な向きの偏極を取り出す体系を開発した。実際に139La原子核の中性子吸収・複合核形成反応に伴うガンマ線の放出角分布が、入射中性子スピン方向に依存することを、世界で初めて観測した。観測された角分布を原子核反応モデルを用いて解析し、論文として公表した。この結果は、大学、J-PARC等の共同プレスリリースとして発表した。 中性子吸収・複合核形成反応の相関項を逐一検証することで、原子核の共鳴状態を統計的に取り扱うことができることができるか否かを検証できる。この統計的取り扱いが正当化されると、CP対称性を破る素過程が原子核反応の対称性の破れとして大幅に増幅されることが導かれる。これを用いた時間反転対称性の破れの探索は、標準理論を超える物理に対して中性子電気双極子能率を凌駕する感度を持ちうる。 現在までに非偏極・偏極中性子を用いた複数の実験を行なっており、それらを総合的に検討した結果、原子核反応において時間反転対称性の破れが大きく増幅されることが示唆された。この結果は指導学生の博士論文としてまとめられた。 現在さらに、放出ガンマ線の偏極方向の測定など、他の相関項の測定へと発展している。
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