本研究は中性子過剰核における殻構造変容の起源を解明する事を目的としている。そのために殻構造の微視的構造を直接反映する物理量である不安定核の磁気モーメント測定法を開発し、ガンマ線検出器や新たに開発する実験装置を用いて多様な原子核で核分光実験を実施し、系統的な研究から変容メカニズム解明を目 指すものである。本年度は実験装置の開発を完了させ、これまでに得られた実験データの解析を進め、得られた研究成果を国際学術誌に発表し、また国内外の学会での口頭発表も行った。不安定核の磁気モーメント測定法にはプランジャー装置および高強度のビームに耐える新たな荷電粒子検出器が必要なため、開発を進め製作を完了させた。プランジャー装置についてはピエゾモータによる高精度リニアステージを用いて標的-荷電リセットフォイルの位置を高精度で変えられるものを製作した。荷電粒子検出器は高レート耐性かつ高位置分解能を実現させるため、CsIシンチレーターとマルチアノードPMTを用いた荷電粒子検出器を製作した。殻構造変容を理解するためにインド・タタ基礎研究所(TIFR)、オーストラリア国立大学(ANU)、原子力機構 (JAEA)で行った実験データを解析し、得られた結果の成果発表を行なった。ANUのデータでは40Caの実験データの解析により、殻構造変容に関係した変形共存現象を理解するための新たな結果を得た。JAEAのデータからはアクチノイド領域の殻構造に関する結果を得た。更にTIFRの実験からSn領域および質量数130領域での殻構造変容に関する新たな結果を得ることができた。
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