研究課題
前年度に構築した発振波長 298 nm のパルスレーザーを用いて Xe 原子の準安定状態 5p6s_J=2 への 2光子励起実験を行った。この遷移では電気双極子(E1)の2光子遷移は禁止され、磁気双極子・電気双極子の2光子(E1M1)あるいは電気双極子・電気四重極子の2光子(E1E2) の遷移であることから励起確率が低く、先行研究はほとんど無い。共鳴励起を確認するために、298nm レーザーの周波数離調をスキャンして準安定状態からのイオン化再結合による蛍光強度を観測した。その結果、8.32 eV に相当する励起エネルギーで蛍光ピークが観測され、準安定状態への2光子励起に相当することを確認した。また、準安定状態に遷移した原子を直接計数することを目的として、823 nm の CWレーザーを照射して 5p6p 状態に励起した後の脱励起光の分光実験も行った。その際、イオン化再結合からの蛍光と識別して、準安定状態からの励起による脱励起蛍光のみを抽出するために、823 nm レーザーの ON/OFF 制御を電気光学変調器(EOM)にて行った。823 nm の周波数離調をスキャンした際の波長 895nm の蛍光ピークを観測し、準安定状態に遷移した原子の確実なプローブを行うことに成功した。実験パラメータ及び、検出された光子数の関係から、生成された Xe 準安定状態の数はパルス当たり 10^5 個のオーダーと見積もられた。
2: おおむね順調に進展している
先行研究がほとんど存在しない、Xe 原子の基底状態から準安定状態への直接 2 光子励起が確認できるに至ったので。
準安定状態の生成数の算出に未だ不確定性が存在するので、測定の再現性とともに各種数値の確度を向上させて、計算値との比較を行える段階に達するのが次の目標である。特に脱励起光の放出が角度依存性を持つかどうかを明らかにすることが、蛍光発生の物理過程を明確にし、励起数の見積もりの正確性を上げる上で重要である。
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J. Phys. B
巻: 52 ページ: 045401
10.1088/1361-6455/aafbd0