暗黒エネルギー(DE)、暗黒物質(DM)は現代物理学の最大級の謎である。特にDMの起源は弱結合する素粒子群である可能性が高い。南部・ゴールドストーンらは自発的対称性の破れ(SSB)に伴う零質量のボゾン (NGB)の存在を予見した。ヒッグス機構は、SSBを拡張した模型であり、同機構が検証されつつある現在、SSBの主導原理を多様な対称性に適用することは正統な潮流である。故に重いDMの探索と、その対極にある質量が零に近いNGBの一般的探索は、探索の両輪となる資格がある。そこで2色の極短パルスレーザー光を同軸上で混合して真空中で集光し、軽い暗黒物質となり得るsub-eV質量域の中性共鳴場を介した誘導光子-光子散乱(真空内四光波混合)を、高強度レーザーを用いて探索することを目的として研究を推進した。前年度までに構築・校正された、生成用レーザー光と誘導用レーザー光を同軸上で真空下にて混合集光する真空内四光波混合探索システムを用いて、背景光が十分に抑えられた条件下で、協力研究者らが運用する京都大学化学研究所(京大化研)の高強度レーザー施設にて、レーザー強度を増しつつ探索感度を段階的に向上させた。これらの段階的な探索結果を得るには、広島大学から京大化研へ頻繁に来所する必要があったが、残念ながらコロナの影響により来所回数が非常に限られ、当初の計画通りには実施できなかった。しかし、前年度までに取得できた探索用データの解析を重点的に行いその結果を公表した。
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