研究課題/領域番号 |
17H02898
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
栗木 雅夫 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (80321537)
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研究分担者 |
清宮 裕史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 特別助教 (20756720)
山本 尚人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (60377918)
坂上 和之 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (80546333)
金 秀光 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20594055)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エミッタンス交換 / 位相空間回転 / リニアコライダー / 偏極電子ビーム / 扁平ビーム / 空間電荷効果 |
研究実績の概要 |
位相空間回転(Round to Flat Beam Transformation; RFBT および Transverse to Longitudinal Emittance Exchange; TLEX)による、極低エミッタンス扁平ビームの生成が課題である。線形加速器による電子・陽電子コライダーでは、大きなxy比を持つビームを数キロ程度の蓄積リングでの放射減衰を利用して生成する。本課題では、大型蓄積リングに代わり、数10mから100m 程度の入射加速器において、RFBTとTLEXを用いてリニアコライダーに必要なビームの生成について理論およびシミュレーションによる検討、およびビーム実験による原理実証を行う。 現在までのところ、理論およびシミュレーション研究から、空間電荷効果が無い条件で、必要なビーム生成が可能であることが確認されている。また、空間電荷効果を含めた場合、エネルギーの低いカソード近傍における影響が支配的なことがわかっている。そのため、ビーム径を大きくとり、空間電荷の低い状態でビームを生成することを検討している。その場合、幾何的な非線形性を原因とするエミッタンスの増大が生じる。この二つの競合過程の間で最適な条件を探索することが課題である。 ビーム試験はKEK-STF(Superconducting Test Facility) およびANL(Argonne National Laboratory, 米国)WFA (Wake Field Accelerator)での準備を進めている。KEK-STFでは2019年3月にビーム生成および加速試験に成功した。 RF電子銃における偏極電子ビームの生成のため、高い耐久性を持つNEA-GaAsカソードの開発をすすめている。CsKTe薄膜による活性化試験に成功し、従来のCsOによる活性化に比べて20倍程度の耐久性の向上が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーショによる検討においては、各要素技術(RFBT変換、TLEX変換)についての特性の理解が進み、全体シミュレーションに進んでいる。一方、STFの試験運転が2019年の3月に成功裏に行われ、ビームテストの準備が整いつつある。必要なskewQ磁石などはすでに製造済なので、全体シミュレーションが終了後に、skewQ磁石を設置することでビームテストが可能である。また、最終的に必要となる要素技術であるRF電子銃で使用可能なスピン偏極電子源については、CsKTe-GaAs陰極が従来よりも数十倍高い耐久性を示しており、その可能性がひらけつつある。
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今後の研究の推進方策 |
KEK-STFにおけるビームテストのシミュレーションを進める。その結果をもとに回転Q磁石の強度および位置を決定し、既存のビームラインに磁石の設置をおこなう。回転Q磁石はすでに製作すみである。ビームテストは前半部のRFBTの部分のみを実施する。後半のTLEXの部分は科研費の当初の予定に含まれていない。以上のビームテストから、本提案の妥当性についての評価を行う。
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