研究課題/領域番号 |
17H02901
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
浅岡 陽一 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 次席研究員(研究院講師) (40345054)
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研究分担者 |
片岡 龍峰 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90462671)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CALET / ガンマ線 / 重力波 / ガンマ線バースト / 宇宙線電子 / 太陽変調 / フォーブッシュ減少 / 宇宙天気 |
研究実績の概要 |
2015年9月のAdvanced LIGOによる重力波直接検出の成功,そして2017年8月にはLIGO/Virgoが検出した重力波イベントGW170817に対する電磁波対応天体の初同定が早くも実現され,重力波による天文学・物理学は急速な進展を見せている.継続時間の短いガンマ線バースト(sGRB)は,重中性子星連星あるいはブラックホール・中性子星連星の衝突合体により発生するという説が最も有力であり,実際GW170817もその描像を裏付ける形となった.一方この重力波イベントに伴うGRBは非常に微弱で特殊な例と考えられており,今後の重力波対応天体の観測が重要となっている.この意味で,sGRBを観測するX線,ガンマ線観測装置による同時観測に大きな期待が集まっている.2015年10月より国際宇宙ステーション(ISS)での観測を開始したCALETはそのような観測装置の一つであり,2年間の定常観測を無事終了し,現在も順調に後期運用を続けている.2017年秋に開始される重力波観測のRun3でも引き続きCALETの貢献が期待できる. 本研究では,CALETの地上システムにリアルタイムデータ解析によるトランジェント現象探索システムを新たに構築することで,GeV領域の高エネルギー成分まで含めたsGRBのガンマ線即時放射と重力波の同時観測を目指す.さらにそのシステムを応用して,1-10GeVの宇宙線電子スペクトルの変動観測と宇宙天気の監視を行う. 2017年度は,計画通りリアルタイムガンマ線突発天体探索システム用の計算サーバを導入し,関連するデータフローの開発を進めた.並行して,過去の観測データとシミュレーションデータを用いた探索感度向上のための研究を行った.また,共通ソフトウェアの開発効率向上を目的として,専門業者の助けを得てリファクタリングを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は,リアルタイムガンマ線突発天体探索システム用の計算サーバを予定通り導入し,関連するデータフローの開発を進めた.現在,リアルタイム監視システムのプロトタイプを稼働させている.また,並行して行った探索感度向上のための研究では,拡散成分の観測による感度の推定,バックグラウンドの理解,Point Spread Function の導出を行った. CALETは日本実験棟船外実験プラットフォームにおいて最も広い視野を確保できる#9ポートを占有しており、荷電宇宙線の観測には十分な視野を有している.しかし,ガンマ線トランジェントの観測において発見可能性を向上させため,視野を最大化した結果,ISS構造物からのバックグラウンドを考慮することがとても重要なことが判明した.この広角領域での視野遮蔽を考慮してガンマ線候補や感度を算出する手法を開発した. LIGO/Virgo の重力波観測 Run2 においても,2個目の重力波イベントGW151226に対するガンマ線探索(Astrophysical Journal Letters, 2016)の手法を発展させ,全ての重力波トリガーに対して探索を行った.中性子星連星の合体で電磁波放射との同時観測が達成された GW170817 に関しても1日以内に解析結果をチーム内に報告している(視野外).重力波に同期するGeVガンマ線はまだ検出されていないので,今後の観測が重要である.
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今後の研究の推進方策 |
LIGO/Virgo の重力波観測 Run3 までに自律的探索システムを稼働させることを最大の目標とする.視野遮蔽の計算に,当初の想定よりも大きなCPUリソースが必要であることが判明したが,今年度導入する2台目のサーバーを活用することで対処する.
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