研究課題/領域番号 |
17H02907
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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研究分担者 |
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 時間空間同時分解分光 / フェムト秒電子線 / カソードルミネッセンス / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
半導体や量子構造、蛍光体においてナノメートル領域で起こる発光の動的観測を実現するには、空間分解能と時間分解能を具備した分光計測系が必要である。我々は、禁制帯幅が広い物質にも電子-正孔対励起が可能な、フェムト~ピコ秒パルス電子銃を走査型電子顕微鏡に組み込み、それをナノメートル台の微小領域に集束する、日本に唯一の時間・空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)測定系の高空間分解能化と高感度化を行っている。また、ボイド等の構造欠陥や積層欠陥(面欠陥)、転位等の線欠陥、また、点欠陥が非輻射再結合寿命に与える影響と、ナノ構造サイズが輻射再結合寿命に与える影響を明らかにする。 H29年度の計画は、金フォトカソードの冷却機構開発と高出力フェムト秒Al2O3:Tiレーザの第3高調波により高輝度パルス電子を発生させること、STRCL装置へリターディング機構を導入し、更に陰極線蛍光の検出部に視野制限等を設け、高空間分解能化と高感度化を行うこと、そしてAlNや高AlNモル分率AlGaN、AlInN及びZnO/MgZnO結晶成長とダイナミクス評価を行うことであった。 実際に、STRCL装置の改良を推進しつつ成果を発信するため、高輝度パルス電子線の発生とリターディング機構の設計を行い、設備発注目前となった。また、ヘリコン波励起プラズマスパッタ装置の安定動作に用いるプラズマプロセスモニターを導入した。そして、電子線励起が有効な、m面成長AlInN混晶ナノ構造、AlGaN量子井戸に加え、ウルツ鉱構造と異なりsp2混成軌道を基本とする2次元物質である六方晶窒化ボロン(h-BN)微粉末及びエピ層のSTRCL評価を行い、発光メカニズムを明らかにした。さらに、無添加や不純物添加エピ及び基板そのものであるGaNにおける構造欠陥、面欠陥、線欠陥、点欠陥に関する総括的研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記したように、STRCL装置の改良計画(立案と設計)は予定通り進んでいる。研究成果としては、m面AlInNナノ構造体やAlGaN量子井戸、2次元層状h-BNの評価を行いつつZnO系材料の成長準備も滞りない。また、論文・発表ともに発信している。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、当初の予定どおりSTRCL装置の空間分解能向上を継続する一方、H29年度に開始したAlGaN、AlInN、h-BNやZnO等の広禁制帯幅半導体の微細領域における発光ダイナミクス評価を継続する。新たな試料入手に関しては、人的制限も考え、他の機関からの資料提供を適宜仰ぎながら結晶成長も進める。研究を阻害する課題は特にない。
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