単層遷移金属ダイカルコゲナイドを単一光子源として利用する可能性を検討するために、全ガス原料CVD法によって成長した二硫化タングステンの微小単結晶の顕微発光スペクトルを調べた。ディスク状に微細加工された二硫化モリブデン単層膜については、サイズに依存した発光のブルーシフトが報告されていたが、CVD成長初期に観測される微小正三角形状の単層膜の量子閉じ込め効果についてはよく分かっていなかった。我々はSiO2基板上に分散した一辺の長さの平均値が100nmと300nmの二硫化タングステン微結晶試料について、発光スペクトルの位置依存性を詳細に調べ、10meV程度のブルーシフトを観測した。正三角形状の無限ポテンシャル井戸のモデルから算出されるシフト量に比べて大きな値が得られたが、これは二硫化モリブデンに関して報告されている傾向と一致している。 また、微小結晶がSiO2基板上に希薄に分布した試料において、5Kの低温で、発光スペクトルのレッドシフトを伴う発光強度のブリンキング的な振る舞いが観測された。これらの結果から単一の微小三角形状単結晶を単一の量子ドットのように利用できる可能性が示されたが、微小単結晶中に存在する単一欠陥に起因する可能性もあり、今後の研究で明らかにする必要がある。 また、同様の擬0次元材料であるCdSeナノプレートについて、共鳴光励起時の光劣化を緩和するために、両側からCdS層で挟んだコアシェル構造ナノプレートを作製して、その単一発光スペクトルやブリンキングの様子を調べ、光耐性が大幅に伸びたことを確認した。
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