研究成果の概要 |
次世代省エネルギー素子の動作には非散逸電流の利用が期待されている. 反転対称性の破れたバルク結晶中の光電流、「シフト電流」はその候補の一つである. 本研究では, シフト電流の超高速性, 低散逸性と電子系トポロジーの寄与を明らかとするため, 瞬時光電流から発生するテラヘルツ帯の電磁波を解析する新たな非接触/高速の光電流分光法を開発した. 励起光の光子エネルギーを掃引して光励起キャリアのダイナミクスを観測することにより, 電極や回路に影響されない光電流スペクトルの計測が可能となった. 強誘電性半導体における実験結果は, 結晶構造を基にした第一原理計算と非常に良い一致を示すことが明らかとなった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近年, 古典的な電子分極から, 異常ホール効果, 磁気スキルミオン, トポロジカル絶縁体, ワイル半金属等の量子物質まで, 様々な物質系/物理現象においてベリー位相が表舞台に出てきている. 「シフト電流」は電子バンド間のベリー接続の差が直接観測にかかる興味深い物理現象であるとともに, 新規太陽電池や高速の赤外光センサーへの応用も期待されている. 本研究によって, 新たな非接触/高速の光電流分光法の有効性とともに, シフト電流の応答が結晶構造のみからの第一原理計算によって予測できることが示された. またフォノン等による散逸や, 有限のコヒーレンスなどの存在も明らかとなった.
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