研究実績の概要 |
ノンドープ超伝導を示すT'-La1.8Eu0.2CuO4の多結晶試料と磁性不純物Niおよび非磁性不純物Znで部分置換した多結晶試料について、ミュオンスピン緩和の実験を行った。その結果、いずれの試料も超伝導相と短距離磁気秩序相に相分離していることが分かった。そして、超伝導相の電子状態は、T構造のホールドープ型銅酸化物La2-xSrxCuO4のオーバードープ領域における電子状態と酷似していることが分かった。 T'-La1.8Eu0.2CuO4の多結晶試料について、X線吸収の実験を行った。その結果、プロテクト還元アニールによって超伝導を示す試料では、電子キャリアが大量にドープされていることが分かった。これにより、ノンドープ超伝導を示す試料では、電荷移動ギャップが潰れ、それによって大量の電子とホールが共存している可能性が高いと結論した。 超伝導を示すT'-Pr1.3-xLa0.7CexCuO4+δ(x = 0.05, 0.10)について、NMRの実験を行った。その結果、電子ドープ量の増加につれて反強磁性相関が抑制されていくことが明らかになった。また、超伝導の対称性は、電子ドープ量に関わらずd波であると結論した。 T'-Pr1.3-xLa0.7CexCuO4+δ(x = 0.05, 0.10)の光学反射率の測定を行った。その結果、プロテクト還元アニールによって超伝導を示す単結晶試料については反射率が大きく、非超伝導の試料に比べて電子キャリアがかなり多いことが分かった。また、超伝導を示す試料では、新たな振動ピークが観測された。このピークは酸素欠損によって生じた可能性が高く、還元アニールによる酸素欠損が電子キャリアを誘起し、超伝導の発現に寄与している可能性があることが分かった。
|