研究課題/領域番号 |
17H02922
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 昌利 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (30313117)
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研究分担者 |
小林 伸吾 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (40779675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 物性理論 |
研究実績の概要 |
結晶対称性は空間群だけでも230あり,さらには磁気構造から生じる磁気結晶対称性,あるいは異方性超伝導性を生み出す超伝導ギャップの対称性の違いも加えると考慮すべき対称性は膨大なものとなる.したがって,結晶対称性から生じる新奇な量子秩序相の系統的な研究には,まずそれらの複雑な対称性を見通しよく取り扱える理論を構築する必要がある.とりわけ,トポロジカル量子秩序相の構造の解明には,K群と結晶対称性の融合を可能とする同変K理論を物性理論の立場から整備する必要がある.そこで,まず,本年度は,数学理論である同変K理論を物性理論の立場から構成し直し,結晶対称性によって守られたトポロジカル結晶絶縁体およびトポロジカル結晶超伝導体の完全な分類を与える一般的な枠組みを構築した.その一方,研究を効果的に進めるには,具体的な現象に即した研究も行う必要がある.この目的を果たすため,異方的超伝導体におけるラインノードの安定性に関する研究を行い,付随するトポロジカル量子現象を明らかにした.まず,非共型結晶構造や磁気秩序を考慮し,結晶の対称性により保護されるラインノードを包括的に分類した.さらに,バルク・エッジ対応と有効模型を用いることで,反強磁性秩序を持つ超伝導体-UPd2Al3-において新奇トポロジカル表面状態が存在することを明らかにした.並行してアンチペロブスカイト型ディラック半金属の研究も行い,高次スピンにともなう特異な光学特性を明らかにするために,その系における磁気円二色性の計算手法を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非共型結晶構造や磁気秩序を含む一般の結晶対称性を考慮したトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の分類理論の枠組の構築に成功するとともに,それらの対称性より生じる新しい量子秩序相を明らかにすることに成功している.
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の分類と進めるとともに,その励起の特性を明らかにする.特に,トポロジカル超伝導体特有の励起であるマヨラナフェルミオンと結晶対称性の関係を明らかにしていく.
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