研究課題/領域番号 |
17H02927
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
前川 禎通 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (60005973)
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研究分担者 |
中堂 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (30455282)
小野 正雄 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (50370375)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スピントロニクス / スピン流 / スピン蓄積 / アインシュタイン・ドハース効果 / バーネット効果 |
研究実績の概要 |
物質の持つ様々な角運動量(スピン)と力学回転との相互作用を明らかにし、力学回転による角運 動量制御法を確立するとともに、力学回転運動を組み込んだスピントロニクス(スピンメカトロニク ス)を開拓する。1915年にアインシュタイン達は、力学回転と磁気モーメントの結合を見出し(アインシュタイン-ド・ハ ース効果)、電子の角運動量が磁気の起源であることを明らかにした。物質の持つ角運動量は、電子スピン、原子核スピン、力学回転、流体中の渦(局所回転)等多彩である。これらの角運動量間の相互変換を用いて、非慣性系におけるゲージ理論を枠組みとし、現代的手法を駆使した実験手法と組み合わせ、スピントロニクスの新たな展開をはかる。 平成30年度では、実験グループと共同で、(1)バーネット効果を用いたフェリ磁性体の角運動量補償温度の測定方法の提案、と(2)表面音波を用いたスピン流生成手法の提案を行った。スピントロニクスでは、伝導電子と磁化との角運動量のやり取りが重要であり、フェリ磁性体を用いた場合、角運動量補償温度で物理現象が大きく変化する可能性がある。しかし、これまでは角運動量補償温度を直接検出する方法がなかった。我々が今回提案する手法(1)は今後、スピントロニクスだけでなく、様々な分野で有用になると期待される。(2)については、表面弾性波の持つ角運動量を電子スピンに変換する手法であり、表面弾性波のスピントロニクスへの展開が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子は電気的自由度である電荷と磁気的自由度であるスピンを待つ。電荷の自由度を駆使して発展 してきた従来のエレクトロニクスに対して、スピントロニクスはスピンの自由度を最大限に活かした テクノロジーである。電子のスピン角運動量は、自然界に存在する様々な角運動量と相互変換が可能である。我々は、すでに原子核の角運動量、物質の力学回転の角運動量、流体の渦運動が持つ角運動量など、様々な角運動量から電子スピンの流れ(スピン流)の創生を行ってきた。我々の研究はスピンメカトロニクスと名付けられ、他分野にも大変注目されるに至っている。2017年度には、ブルックヘブン研究所(米国)の原子核研究グループが我々の流体発電(R.Takakahashi et al.:Nature Phys. 12, 52 (2016))の研究がQuark-Gluon Plasmaの研究に応用された(Nature 548, 62 (2017)).
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今後の研究の推進方策 |
我々の提案する、力学回転による角運動量制御法の理論は、自然界に存在するあらゆる角運動量から、電子スピン流の生成を可能にする。すでに、液体金属の渦運動、表面弾性波の角運動量などからのスピン流生成に成功している。傾斜構造を持つ金属材料では、電流の流れが空間分布を持ち渦運動が発生する。この渦を用いたスピン流生成は次の課題である。また、ナノデバイスで注目されているグラフェンでは電子間相互作用により、電子の運動が粘性流体として取り扱われる領域があるy。この領域では、電流の中に渦運動が発生するため、この渦運動を利用したスピン流生生成が可能であり、グラフェンのスピントロニクスへの新しい応用が期待される。今後は、実験グループと協力してスピンメカトロニクスをさらに発展させていく。
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