研究課題/領域番号 |
17H02935
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
中川 賢一 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (90217670)
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研究分担者 |
宮本 洋子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (50281655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子シミュレーション / 冷却原子 / リュードベリ原子 / 量子多体系 / イジングモデル |
研究実績の概要 |
本研究は、光トラップ中のレーザー冷却Rb原子をレーザーでリドベルグ(Rydberg)状態に励起することにより、量子多体系の振る舞いを模倣する量子シミュレーターを開発することが目的である。本研究では、空間位相変調器によって作られる2次元マイクロ光トラップを用いて1次元および2次元格子状に原子を1個ずつ並べて配置してイジングモデルで表される量子スピン系の量子シミュレーションが実現可能となる。 H29年度において行った5個および6個の原子を用いた1次元格子およびリング格子の実験で、量子シミュレーションの基本的な動作が確認でき、またこの系のコヒーレントな時間発展を観測することができた。H30年度では、この実験結果の理論的な解析を中心に研究を行い、得られた実験結果がほぼ理論的に予想される振る舞いに一致していることを確認した。また現状でのこの実験系の問題点も明らかになり、中間準位からの自然放出やレーザーの周波数ゆらぎによってコヒーレント相互作用時間が約2マイクロ秒に制限されていることが分かった。このため、コヒーレント相互作用時間を長くするため、従来とは別の中間準位を経てRydberg状態に励起する方法を検討し、これに必要となる波長420nmと1013nmの外部共振器型半導体レーザー光源を新たに開発した。また、これら2波長のレーザーの絶対周波数を安定化するために必要なトランスファーの基準光共振器を開発し、その光学特性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H30年度は、実験室がある建物の大規模改修工事が5月から10月まで行われ、約半年に渡って実験室が封鎖され、実験が行えなかった。このため、実験室の封鎖中は理論的な解析を中心に研究を行い、実験室が再開した11月以降からレーザーの開発および実験を再開した。このような事情で、実験に関しては若干遅れているが、全体としては概ね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に行われた実験室の改修工事により、実験の中断および実験装置の一部の解体により、本格的な量子シミュレーションの実験を再開するのに少々時間がかかる見通しである。このため、現在の実験装置の改良および問題点を改善するための新たな実験装置の開発を中心に研究を行う予定である。
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