研究課題/領域番号 |
17H02936
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 亮 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10435951)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 量子計測 / 量子測定 |
研究実績の概要 |
本研究では,量子光源に光子対の消滅過程を組み合わせた新しい吸収計測法を実現することで,微弱な吸収の検出感度の飛躍的な向上を目的としている.これにより,従来困難であった,単一分子等の非常に吸収が小さな対象のイメージングや分光への道を拓くことを目指す.当該年度は, A. 高性能量子光源の開発,B. 光子の対消滅装置の構築の2つの項目に関して研究を進めた. 項目Aに関しては,パラメトリック下方変換と呼ばれる二つの光子が対で同時に発生する過程を用いた.ポンプレーザー光を非線形光学結晶に入射すると,光子が対で同時に発生する.非線形光学結晶としては、BBO結晶を用いた.本研究では,光子対の消滅過程での量子干渉の安定化のために,発生する光子対をポンプレーザー光と同軸に発生させた.また,TYPEⅡの位相整合条件を用いることで,発生した光子対を100%の効率で分岐できるようにした. 項目Bに関しては,量子干渉効果を用いて,光子の対消滅を実現する装置を構築した.項目Aで実現した量子光源から発生させた光子対を,ポンプレーザー光とともに,再度非線形光学結晶に入射した.ポンプレーザー光と光子対との位相差を適切に設定することで、入射光子対の確率振幅と,新たに発生する光子対の確率振幅が,破壊的な量子干渉を起こすことで,光子対が消滅することを確認した.対消滅の効率,つまり入射した光子対数に対する対消滅した光子対数の割合は,位相を変化させた時の干渉縞の明瞭度から算出できる.そこで,干渉縞を測定し,その明瞭度を算出することで,対消滅効率を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,量子光源の開発を実施した.本研究に適した,安定な光源を実現することができた.次に,光子対の消滅装置を構築した.破壊的量子干渉効果を用いることで,光子が対で消滅することを確認することができた.また,その対消滅効率を評価した.以上から,目標としていた項目を達成できており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず,構築した光子対の消滅装置の構築に続き,光子対の消滅効率の向上について研究を進める.光子対消滅過程は,光子対の確率振幅間の量子干渉効果で実現している.そこで,対消滅用の非線形光学結晶に入射する光子対の空間モードを制御することで,対消滅効率の向上を目指す.その後,ハイブリッド型量子吸収イメージングシステムの構築を行う.従来型の量子吸収イメージング,本提案の対消滅型の量子吸収イメージングの両方を同じ実験系上で評価できるハイブリッド型の装置を構築し,光源の性能や,サンプルに依存しない定量的な比較を行う.
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