研究課題
膜貫通配列の中央にグルタミン残基をもち、N末端に親水性アミノ酸を4残基導入したペプチドをベシクルに添加し、脂質膜に組み込まれたペプチドがリン脂質のフリップフロップを誘起することを中性子散乱法およびNBD脂質の蛍光消光法により明らかにした。このペプチドをHEK293細胞へ添加した際に、細胞膜においてホスファチジルセリンが細胞膜外側へ露出されることをフローサイトメトリーにより確認した。この作用はカスパーゼの活性化を伴わなかったことから、細胞膜に挿入されたペプチドがアポトーシスを引き起こさずに、直接スクランブラーゼ活性を示すことによってホスファチジルセリンの露出が生じたことが明らかになった。さらに、この細胞をJ774マクロファージ細胞と共培養したところ、HEK293細胞がマクロファージに取り込まれることをフローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡を用いた実験により見いだした。これらの実験によって、スクランブラーゼ活性をもつペプチドを外部から細胞に導入し、マクロファージによる貪食を誘起することが可能であることを実証することができた。ピレンエキシマー蛍光を利用したリン脂質の粒子間移動速度評価法をリン脂質輸送タンパク質Sec14の脂質輸送活性評価に適用し、Sec14の脂質輸送が、コーン型脂質を含む膜や高膜曲率膜において促進された。タンパク質の脂質膜への結合性は、輸送基質であるホスファチジルコリンが存在すると大きく低下することが判明したが、ホスファチジルコリンを輸送しない変異体を使うことで膜結合に対する脂質組成依存性の評価が可能となった。一連の実験から、脂質膜表面の隙間(packing defect)ができるような状況(コーン型脂質含有膜、高膜曲率膜)において、タンパク質の膜結合性や脂質輸送活性が促進されることが明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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