相転移温度が高い飽和脂質、相転移温度が低い不飽和脂質、およびコレステロールを膜成分にして、二分子膜ベシクルとコロイド粒子が織りなすカップリング構造を観察した。先ず、静電相互作用を利用して、ベシクル膜面にコロイド粒子を結合させた。膜への結合に適したコロイドの粒子サイズや水溶液条件を調査した。次に、ベシクル膜の成分を変化させ、コロイドの吸着に及ぼす影響を検討した。結果、ベシクル膜面の相分離構造の有無によって、コロイド吸着量が大きく異なることが分かった。そして、浸透圧によりベシクル体積を減少させ膜の曲率変形を誘導した。さらに外場として温度変化を利用して、ベシクルの表面積を増減させることで膜の曲率変形をコントロールした。結果、コロイドを伴ったチューブ構造生成や膜面の陥入変形といったコロイド吸着部位が起点となるいくつかの膜の変形パターンを見出した。 また、ベシクル膜面の相分離と膜ゆらぎの関係についての論文を発表した。浸透圧によりベシクル体積を増加させ、膜面のゆらぎ(波うち)を抑えると、多成分膜が相分離する傾向があること、そして相分離した境界領域に働く線張力が増加することを実験的に明らかにした。膜の組成と温度をパラメータにした相図、および相分離境界線の揺らぎ解析から算出した線張力が、膜ゆらぎの抑制により変化することを報告した。さらに、膜ゆらぎの抑制をパラメータとした相分離の自由エネルギーを使って、物理メカニズムを議論した。
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