研究課題/領域番号 |
17H02944
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 康之 九州大学, 理学研究院, 教授 (00225070)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マイクロレオロジー / 電気泳動移動度 / ホログラフィック顕微鏡 / 粘弾性スペクトル |
研究実績の概要 |
昨年度に開発を行った荷電コロイド粒子の交流電場下における広帯域移動度測定システムを用いて、厚さ100ミクロンのセル中での移動度スペクトルの空間依存性の測定を行った。その結果、セル界面の電荷に起因した電気浸透流の周波数・空間依存性を極めて広い周波数域で測定することに成功した。また、得られた結果はナビエ・ストークス方程式を用いて解析的に計算した理論スペクトルにより定性的に議論でき、コロイド分散系での電気応答の時空間ダイナミクスに対して新たな情報を得ることに成功した。また、典型的な粘弾性流体であるポリエチレンオキシド水溶液中に分散した荷電コロイドの複素易動度スペクトル測定を行い、粘弾性スペクトルの周波数依存性を測定することにも成功した。この際、多数の正弦波電場を入力として用いることで、高速でのスペクトル測定が実現された。 本年度はさらに、昨年度に前倒して開発を行ったレイリー・ゾンマーフェルト回折理論を用いた、ホログラフィック顕微鏡によるコロイド粒子の3次元追跡系を用いて、溶液中で沈降しつつ、交流電場による電気泳動する荷電粒子の3次元ダイナミクスの観測に成功した。ことに、光軸と並行方向に電場を印加し、光軸方向に振動する粒子のホログラムを高速度カメラで測定し、その結果から粒子の高さを高速に推定することで、500Hzまでの広帯域で電気泳動移動度スペクトルを電気浸透流の影響を受けることなく測定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、計画していたホログラフィック顕微鏡顕微鏡を用いた3次元粒子位置測定法の開発を行い、これを用いて複数粒子の交流電場に対する交流電気泳動移動度を1粒子の精度で測定することに成功し、その成果を論文として発表することができた。 また、光トラップを用いた交流マイクロレオロジー測定においては、粘弾性媒質中の荷電コロイド粒子の交流応答から、その媒質の複素粘弾性スペクトルの周波数依存性を得ることに成功し、この際、多周波重ね合わせ電場を用いることで短時間測定を実現した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である来年度は、当初の計画に従って、開発された手法を用いて、高分子のゲル化およびコロイド系のガラス化などの比較的遅い時間変化を示す非平衡ソフトマター系における、局所力学物性の時間分解測定および空間分解測定を推進する計画である。
|
備考 |
第69回コロイドおよび界面化学討論会において、研究協力者である壹岐晃平氏(大学院生)が、本研究の成果の一部を発表し、その講演に対して、若手口頭講演賞を受賞した。
|