前年度実施したセル内内部で壁面からの距離に依存した電気泳動移動度スペクトル測定により、広い周波数にわたって電気浸透流の周波数依存性が顕著に表れることが分かった。そこで、新たに表面をゲルコートして表面電荷を遮蔽したセルを作成して測定を行ったところ、得られたスペクトルにはセル位置依存性が現れず、真の移動度スペクトルが得られることが確認された。その結果、本研究の測定域では移動度スペクトルが周波数依存性を示さないことが明らかとなった。さらに、添加塩を入れた系へも適用することで、コロイドの1粒子の表面電荷およびセル表面電荷の添加塩濃度依存性の測定に成功した。一方、粘弾性水溶液中での移動度スペクトルは、セル内の高さ依存性は濃度の増大ととともに消滅することも明らかとなった。本年度の中盤に本研究で新規導入したADコンバーターおよび測定コントローラが故障し、その修理に長時間を要したため、およびCOVID19の蔓延による行動制限のために研究の推進が遅延した。 一方で、ホログラフィック顕微鏡を用いた垂直電場下での単一コロイド粒子移動度測定においては、粒子のホログラム像が重なり合う条件でも、多粒子同時の3次元粒子追跡に成功した。これから、多粒子の電気泳動移動度同時測定を実現し、約50個の粒子の移動度の分布測定に成功した。その結果得られた移動度の平均値は同じ試料に対して市販の電気泳動光散乱装置を用いて得られた測定値を良い一致を示し、その分散が10%程度であることが分かった。
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