研究課題/領域番号 |
17H02945
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
栗田 玲 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (20579908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 泡沫 / ソフトジャミング / ソフトマター |
研究実績の概要 |
泡沫とは,気体の泡を液体中に高密度に閉じ込めた状態であり,ソフトジャミングシステムともよばれる.このような状態は,様々な場面で見ることができる.例えば,石鹸泡や消泡剤といった日常的な場面に加え,乾燥から身を守るために泡で身体をコーティングする虫や泡の中に卵を産み外敵から守るモリアオガエルなど生態系でも泡沫は利用されている.泡沫は,安定状態ではなく,時間とともに壊れ気泡が抜けていき,最終的には単なる水滴になっていく. 泡沫は,気体が高密度に詰まっていることにより,弾性を有している.このため,泡が形状を保持できる.弾性率は液体分率によって変化し,液体分率の増加とともに低下していく.一方で,泡沫は時間とともに崩壊することで,液体分率は増加する.泡沫の利用にとって,この崩壊過程を理解することは重要であると考えられている. 崩壊過程の一つに,泡沫が一気に崩壊する協同的崩壊がある.この協同的崩壊は,一番破壊的な崩壊過程であるにもかかわらず,その機構についてほとんどわかっていなかった.我々は,協同的崩壊過程を高速度カメラを用いて直接観察を行った.その結果,伝搬モードと貫通モードの2種類が存在することがわかった.また,この崩壊には液体の粘性は関係ないことがわかった.液膜速度の液体分率依存性も調べ,泡沫の浸透圧を考えた理論で説明できることがわかった.これらの結果から,協同的崩壊は物理機構で支配されていることが示唆された.これらの結果は,泡沫の理解へ重要な知見であるとともに,安定性につながる産業的にも有意義な結果であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,「泡沫物性の液体分率依存性」を主のキーワードとして,研究を進めている.泡沫の安定性は理学的な興味だけではなく,産業的にとっても重要な性質である.ドライ状態における崩壊過程を理解することは重要であると考えられており,崩壊過程の一つである協同的崩壊がある.この崩壊過程は,一番破壊的な崩壊過程であるにもかかわらず,その機構についてほとんどわかっていなかった.我々は協同的崩壊過程を高速度カメラを用いて直接観察を行った.その結果,伝搬モードと貫通モードの2種類が存在することがわかった.液体の粘性が関係しないこともわかった.また,液体分率依存性も調べ,理論構築までいたることができた.これらの結果から,協同的崩壊は物理機構で支配されていることが示唆された.これらの結果は,泡沫の理解へ重要な知見であるとともに,安定性につながる産業的にも有意義な結果が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで泡沫の安定性に関して,研究を行ってきた.実際には,泡沫は外力などの外的要因に影響を受けることが多い.泡沫はソフトジャミング系と呼ばれ,弾性を有している.すなわち,力を外から加えたときにバネのように反発する.泡沫において,力の伝搬機構や内部構造の変化など不明な点が多い.本年度は,力学特性の液体分率依存性を明確にすることを考えている.液体分率が低いドライ状態における力の伝搬,液体分率が大きいジャミング転移近傍の振る舞いなど興味深い.とくにジャミング転移近傍の泡沫の振る舞いはジャミング系の理論と深いつながりがあり,理論との比較も行うことを考えいてる.
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