本研究は,我々(国際共同研究チーム)が新たに提案した“地震波異方性第5のパラメター”を使い,最終的には現在の標準モデルPREMに代わる全地球(上部マントル)標準モデルの構築を目指すものである.そのための基礎的な理論的研究,ロバストな解析アプローチの提案,データ解析,モデル構築などを国際共同研究チームとして推進し,グローバルな異方性構造およびトモグラフィー研究の新たな指標となることをめざしている.地球内部の地震波異方性が,あらたに定義されたパラメターにより適切に記述できるようになることは,地球内部の流動変形を観測から制約する上で重要な進展となり,地球内部構造,地球内部ダイナミクス等の研究分野に広く貢献するものと考えられる. 本研究では以下の六項目を目指すこととしている:(1)表面波解析における新パラメターを含む異方性パラメターの解像可能性の解明,(2)実体波解析(走時,反射・変換特性)における新パラメターを含む異方性パラメターの解像度の解明,(3)実体波,表面波の両者を使った新パラメターを含む異方性パラメターの解像可能性の解明,(4)マントル構成(候補)物質の新パラメターを含む異方性パラメターの推定,(5)標準地球モデルPREMの再構築(revise),(6)新パラメターをパラメターとする広域表面波トモグラフィーの実施. 研究は順調に進んでおり,研究の各項目(1)-(6)に於いて進展があった.また本研究をテーマとした二編の修士論文が,2019年3月東京大学大学院,北海道大学大学院で提出され,それぞれ学位が認められた.研究期間内に全てを完了することはできなかったが,修了後も関連研究は継続して進めている.また延長期間内に関連論文を国際英文誌に発表した.
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