研究実績の概要 |
地球深部構造の推定を目指し、遠地で発生した脈動 P 波を継続時間の長いイベントとして取り扱うことを提案した。そのために、日本全国に展開されているHi-net地震計データを2004年-2020年の期間解析し、0.1-0.25Hzの周波数帯域P波脈動の震源カタログを作成した。研究成果は国際誌に出版し、併せてカタログデータも公開した。 また、海洋波浪モデル WAVEWATCHI III (Ardhuin et al., 2011)から脈動の震源位置と対応するシングルフォースを計算し、地震波形データから作成したカタログと比較した。重心位置の時空間分布、シングルフォースの大きさの頻度分布ともに、大局的には互いに整合的であることが明らかとなった。一方、オーストラリアのカーペンタリア湾近傍に海洋波浪モデルからは予測されないP波脈動の存在することも分かった。 脈動実体波を用いて日本列島直下のP-s変換波を検出し不連続面構造を推定するため、新たな解析手法を開発した。ここで、0.1-0.2 Hzでの脈動実体波の励起源が空間的には局在しているが、時間方向には持続的であると仮定した。P-s変換波の抽出には、レシーバー関数解析を拡張した手法を開発した。まずHi-net地震計データ(上下動)のアレー解析によって入射P波を抽出し、震源時間関数とみなした。震源時間関数を水平動記録のRadial成分からデコンボリューションし、P-s変換波の抽出を行った。全観測点のレシーバー関数をアレー解析した結果、観測点下の410 km不連続面、660 km不連続面でのP-s 変換波の検出に成功した。
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