研究課題/領域番号 |
17H02956
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
筆保 弘徳 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (00435843)
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研究分担者 |
吉田 龍二 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (30625512) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台風 / 発生環境場 / 機械学習 / 台風識別器 |
研究実績の概要 |
本研究は3つの課題を設定しているが、2018年度は、予定通り初年度からひき続き課題1と課題2を取り組んだ。課題1では、機械学習を用いたクラウドクラスター検出手法の開発をして、台風識別器を開発している。台風識別器には、当初の計画から変わり、OpenCV(Open Source Computer Vision Library)のカスケード型AdaBoost識別器を用いた。初年度に開発した台風識別器の精度は上がらなかったが、その検出精度を上げるために、2018年データを組み込むなどの工夫をした。さらに、台風発生環境場の自動算出システムの開発も行った。この機械学習を用いた研究は、国内の学会などで発表し、学術論文に投稿をして受理されている。 課題2でもある、台風発生環境場パターン別の台風統計的研究は、対流圏上層の寒冷渦に注目する研究と、台風の急速発達の気候学的特徴を示す研究を行った。約30年間北西太平洋で発生した台風発生環境場と寒冷渦の影響を統計的に解析したところ、各パターンの台風で有意な差があることが分かった。また、急速発達する台風の環境場の特徴を示した研究も、急速発達しない環境場と比べて有意な差があることが分かった。これらの研究は、国内外の学会などで発表し、学術論文として日本気象学会と米国気象学会に投稿して受理されている。これらの発生環境場と台風の情報は、気候的観点での台風発生研究にも活かすことができるうえ、日本上陸台風の傾向などは防災上でも重要となることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体として、課題1にやや変更があるものの、予定よりも結果がでていている。研究達成度は高いと考えられる。今後は課題2の結果の整理しながら課題3を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、課題2と課題3を取り組む。次年度からの課題2の続きとして、開発した発生環境場診断手法と気象庁 55年長期再解析(JRA-55)を用いて、課題1で検出した全てのクラウドクラスターの発生環境場パターンを診断する。台風の発生ケースと非発生ケールに分けて相違点を蓄積し、環境場パターンごとに台風発生に必要な持続時間、組織化プロセスを阻害する要因など台風発生最終条件を統計的に明らかにする。この統計解析の結果は、学術論文として各学会で発表するだけでなく、ホームページ上で公開する。 本研究課題3は最終プロダクトとなる「台風発生環境場モニタリングシステム」の構築である。①課題1で開発したクラウドクラスター検出手法により、日々の衛星雲画像から全てのクラウドクラスターを検出する。②課題2で用いた発生環境場診断手法により、①で検出した位置情報と気象庁数値予報モデルの結果からクラウドクラスターのスコアを算出し、発生環境場パターンを診断する。③日々発生する全てのクラウドクラスターとその発生環境場パターンを検出・診断・公開する。このモニタリング結果は、課題2の統計解析結果と照らし合わせることで、台風発生の予報をするうえで貴重な参考資料にもなり得る。
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