本研究は3つの課題を設定しているが、2019年度は、当初の予定通り、次年度から引き続き課題2をまとめて、課題3である最終プロダクト「台風発生環境場モニタリングシステム」の開発に取り組んだ。課題2の台風発生環境場パターン別の環境場の統計解析である。台風発生環境場診断手法を早期ドボラックの結果に拡張して、客観的に検出したクラウドクラスターの発生環境場パターンを診断して、発生環境場別の台風発生最終条件を統計解析により明らかにした。台風発生ケースと非発生ケースの大気と海洋の環境場を比較すると、合流域パターン、偏東風波動パターン、先行台風パターンで大気の環境場パラメータに有意な差があった。一方で、シアラインパターン、モンスーンジャイアパターン、先行台風パターンで海洋の環境場パラメータに有意な差があった。つまり、台風発生環境場パターンで分類した台風発生最終条件はそれぞれ特徴があった。これらの研究は、国内外の学会などで発表し、学術論文として日本気象学会誌に投稿して受理されている。課題3では、日々の台風発生環境場を検出するシステムを開発した。課題2で用いた台風発生環境場診断手法により、すべてのグリットで台風スコアを算出し、台風発生環境場パターンを診断した。そして、日々の台風発生環境場パターンをリアルタイムで診断・公開するモニタリングシステムを開発した。このシステムによる診断結果は、台風発生の予報をするうえで貴重な参考資料になり得る。
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