研究実績の概要 |
ロスビー数を変える実験を解析する前に、金星を模した雲層加熱により駆動する惑星大気大循環の水平解像度依存性と多重平衡について調査した。高緯度ジェットで形成される極域間接循環は、雲層のGierasch-Rossow-Williamsのメカニズムを弱める方向に働くため、雲層のスーパーローテーションを弱化させる。間接循環が解像できない低解像実験では、下層大気への角運動量輸送効率が下がり、初期に与えたスーパーローテーションの角運動量が雲層に残りやすい。それゆえ、初期にスーパーローテーションを与えた実験では、初期値を静止状態にした実験よりも、雲層で高速のスーパーローテーションが形成される。このように、低解像度実験では,多重平衡解が出現しやすい結果が得られた。 赤道ケルビン波を下端から強制した金星中層大気大循環モデル実験を行い、「東西風最大値UMAX, 子午面風最大値VMAX, 南北温度差最大値dTMAXの時系列データの3変数空間の振る舞い」と「数年スケールの帯状流年々変動」についてまとめた。UMAXとVMAXとdTMAXの時系列データの散布点は、解析的手法から得られる推定曲線の周辺にプロットされる.また,赤道ケルビンの強制が弱いと、その散布分布は線状になるが、強制が強いと、その散布分布は小さい点状になる.前者の分布は、高緯度ジェットの盛衰に伴う年々変動を反映して線上構造になる。この数値実験の解析により、極域ロスビー波と高緯度ジェットの盛衰に伴うスーパーローテーションの年々変動プロセスを新たに提案した。 対数正規モーメント法を用いた浮遊微粒子のパラメタリゼーションは、臨界半径を導入し、バイモーダルに拡張した定式化を行った。臨界半径を導入することで凝集過程のモーメント方程式が煩雑になった。また、放射コードを組み込んだ大循環モデル実験も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果やその途中経過を学会等で発表した (JpGU-AGU Joint Meeting 2017; 2017年度日本気象学会春季大会、日本流体力学会年会2017)。「惑星中層大気の雲層加熱で駆動する大気大循環の水平解像度依存性と多重平衡に関する研究」と「赤道ケルビン波を下端から強制した金星中層大気大循環の研究」が学術雑誌に掲載された(Yamamoto and Takahashi 2018, Journal of Geophysical Research: Planets in press; Yamamoto and Takahashi 2018, Icarus, 303, 131-148)。
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