研究課題
金星放射伝達(Ikeda 2011)と地形を組み込んだ大気大循環モデルで、大気大循環および長周期波動の地理依存性と地方時依存性を明らかにした(Yamamoto et al. 2021)。昨年度の帯状平均場の解析に加え、本年度は、放射伝達によって強制される熱潮汐波や細かい地形で強制される定在波の三次元構造と熱・運動量フラックスを解析し、Venus Expressやあかつきの観測と比較した。現実的な金星大気大循環モデルでは、雲頂の超回転は、熱潮汐波の赤道向き水平運動量フラックスと鉛直運動量フラックスの両者によって駆動する。波動の分散および運動量フラックスの地形依存性と地方時依存性は、静的安定度が高く太陽光加熱が強い雲頂で、顕著にみられる。雲頂の低緯度では夜から明け方で相対的に分散が高く、赤道鉛直流の分散は高地の上で相対的に高い値をもつ。また、擾乱の熱および運動量フラックスの地方時依存性が強く、雲頂の雲追跡から帯状平均フラックスを見積もるには注意が必要である。雲で覆われた惑星大気の大循環構造に関して、自転と惑星半径を変えた簡略化大気大循環モデル実験を行い、高ロスビー数の大気大循環構造および熱・運動量輸送過程やその変動の相似性を調査した。今年度は、傾圧および順圧エネルギー変換率を算出し、どの擾乱がGieraschメカニズムに寄与するのか?を明らかにした。高ロスビー数では、間欠的に傾圧波が帯状流を弱め、その後、順圧波が帯状流を強める傾向が見られる。低ロスビー数の大気大循環では、強いジェットが形成される極域で傾圧不安定が起こるが、全球で平均すると超回転への寄与は小さく、全球的には順圧波が顕著であった(Tsunoda et al. 2021)。また、高ロスビー数の地球型惑星の大循環構造の水平粘性依存性についても明らかにした(Lu & Yamamoto 2020)。
2: おおむね順調に進展している
力学過程に関する研究成果やその途中経過を学会や研究集会等で発表した (日本流体力学会年会など).大気大循環および長周期波動の地理依存性と地方時依存性,高ロスビー数の大気大循環構造および熱・運動量輸送過程やその変動の相似性に関する研究が学術雑誌に掲載された(Lu & Yamamomoto 2020 PSS, Yamamoto et al. 2021 Icarus; Tsunoda et al. 2021 JGR).
物理過程を理想化した惑星大気大循環モデルの結果を解析し,数値粘性が物理過程に与える影響についても調査する.また,高解像モデルを用いた金星大気大循環実験の結果を解析し,角運動量輸送収支や短周期波動の解析を行う.力学研究と併行して,「対数正規モーメント法を用いた浮遊微粒子のパラメタリゼーション」を輸送モデルに導入する.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Icarus
巻: 355 ページ: 114154
10.1016/j.icarus.2020.114154
Journal of Geophysical Research: Planets
巻: 126 ページ: e2020JE006637
10.1029/2020JE006637
Planetary and Space Science
巻: 190 ページ: 104976
10.1016/j.pss.2020.104976