研究課題
R02年度は,前年度までに開発し大気大循環モデルに組み込んだ雲物理モデルを用いて,金星雲分布の形成に対する大気波動の役割について調べた。雲の mass loading (単位体積あたりに含まれる雲の質量,MLと略記する) をみると,低緯度で東西波数1の構造が目立つ。これは雲底付近 (高度50 km) の濃密な雲の構造を反映している。雲底高度における波活動を調べたところ,東西波数1のケルビン波的な惑星規模波動が卓越していることが明らかになった。このケルビン波的な波動に伴って数ケルビンの温度偏差が作られる。それに伴って,濃硫酸液滴に対する硫酸ガスと水蒸気の飽和蒸気圧が変化し,高温偏差部分で雲の蒸発,低温偏差部分で雲の凝結が起こる。これによって雲底付近のMLが大きく変動する。Peralta et al. (2020) は雲物理を含まない金星大気GCMのシミュレーション結果から,雲底付近の雲の変化には波に伴う鉛直流が重要であると推測したが,本研究の結果からは鉛直流の寄与は小さく,雲の時空間変動は主に波に伴う温度偏差によってもたらされることが示された。以上の結果は国際研究雑誌に投稿済みであり(現在改訂中),まもなく受理される見込みである。また,雲物理モデルの改良として,硫酸エアロゾルの濃度を固定せず,モデル内で動的に濃度が決定されるような定式化および実装を行った。その結果,雲層上部では濃度の低い雲が形成されるようになり,Hashimoto and Abe (2001) の鉛直1次元モデルと整合的な濃度分布が得られた。さらに,COやSO2などを含む大気化学モデルへの拡張を行った。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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