本研究では、気象庁メソスケール非静力学モデルを用いた粒子フィルタ(NHM-RPF)を開発し、積乱雲の発生・発達に関する非線形性・非ガウス性を調査している。 本年度は粒子フィルタにより得られた粒子近似の確率分布を解析する方法の研究を進めた。いくつかの確率密度関数を用いたモデルおよびヒストグラムモデルを用いて、モデル化の方法および情報量規準の適用に関する考察を行った。正規分布、正規混合分布、ヒストグラムを対象としたモデル選択を行ったところ、積乱雲の発達過程においては、確率分布の変化が鉛直風に現れ、続いて水蒸気量、温度に現れることが分かった。本成果については論文としてまとめ、「統計数理」に投稿した。 非線形性が強い場合のデータ同化法として開発した深層学習アンサンブルカルマンフィルタ(DL-EnKF)を,現実大気に適用する場合の知見を得るために、2スケールLorenz96モデルと、そのうちの小スケール変数の大スケール変数への影響をパラメタライズしたLorenz96モデルを用いて、観測データの分布が一定の場合と時間的にランダムに変動する場合について、データ同化実験を行った。非線形性が強い場合にはDL-EnKFによる解析値の精度はEnKFより優ることが分かった。この結果、ニューラルネットワークを学習させるのに,データ同化に用いる数値天気予報モデルによるシミュレーションデータを用いるのが有力な方法であることが示唆された. またアンサンブルデータ同化によって計算されるアンサンブル予測の高度な利用法についても検討した。その一つとしてアンサンブルに基づく相互共分散行列の特異値分解による顕著現象の要因解析手法を考案し、それを平成30年7月豪雨に適用した結果を論文にまとめた。さらに機械学習によって豪雨の要因を特定する開発を行った。
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