研究課題
木星は自転が速く固有磁場が強力であり、太陽風動圧は弱いためその影響を受けにくく、自転効果が支配する内部磁気圏を形成している。MHDの概念を適用すると、内部磁気圏の中で動径方向にプラズマを輸送する事は極めて困難である。一方、木星の衛星イオには活発な火山活動があり、噴出した火山ガスが電離して磁場に捕捉され、トーラス状の濃いプラズマ領域(IPT:イオプラズマトーラス)を形成している。米国のジュノ探査機の磁場計測データと日本の「ひさき」衛星のデータを解析することにより、IPTの朝夕非対称性と太陽風動圧の間に相関があることを明らかにし、太陽風擾乱の影響が内部磁気圏深部にまで到達しているという証拠をつかんだ。また、オーロラとIPTの同時かつ長期間観測から、オーロラの突然増光が発生した後、10-13時間程度の時間差でIPTが増光している事を明らかにした。これは、自転効果が支配的な木星磁気圏であっても、オーロラの変動を引き起こす赤道面内の領域(木星中心から30-40半径離れた領域)からエネルギーが注入されている事を示した。これは上記の研究成果とも整合的である。更に、火山ガスの電離によるIPTのプラズマ密度の増加、IPTから内部磁気圏の外へのプラズマ輸送、オーロラの活発化、内部磁気圏へのエネルギー注入の増大に至る一連の動きを明らかにした。プラズマ密度の増加からオーロラの活発化まで約20日間を要し、内部磁気圏から外側へのプラズマ輸送が拡散的なダイナミクスに支配されている事を示した。これらの一連の観測事実とデータの解釈を米国チームと共有・議論するため、日本人の研究者数名を米国の研究所に派遣し、その結果として11本の国際的学術雑への掲載に至った。また、欧米に限らず、アジア諸国の研究者も多く集まる国際学術集会や大学で、ひさきデータの使い方の講習を行い、関連する研究者の増加に努めた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、ひさき衛星から順調にデータが取得でき、米国探査機ジュノも予定通りの高精度データを取得中である。こららを用いた研究成果は、2018年度だけでも11本の国際的学術誌への掲載が決定しており、2019年度も引き続き成果の創出を続けられる基盤を整えることができた。2019年の上半期だけでも8本の論文公表を予定(掲載決定を含む)されている。
今年度も共同研究・解析の結果を論文として公表する予定である。関連する研究者の増加を期待し、欧米だてではなく、アジア人研究者も多く集まれる研究集会や大学に足を運び、研究成果の公表と探査機データの解析法について講習を行う予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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