研究課題/領域番号 |
17H02968
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野澤 悟徳 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (60212130)
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研究分担者 |
小川 泰信 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (00362210)
藤原 均 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50298741)
川原 琢也 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (40273073)
水野 亮 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (80212231)
堤 雅基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80280535)
斎藤 徳人 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 上級研究員 (90333327)
津田 卓雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (90444421)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大気上下結合 / ライダー / EISCATレーダー / 北極域 / 鉛直風 / 下部熱圏・中間圏 / フォトメータ / オーロラ発光 |
研究実績の概要 |
太陽風エネルギー流入領域直下のトロムソ(北緯69.6度, 東経19.2度)において、マルチビームライダー(以下、Naライダー)を中心に用いた精密拠点観測を実施し、①下部熱圏・中間圏での太陽風エネルギー散逸量、大気温度変動、鉛直風速変動を明らかにし、②下部熱圏・中間圏と成層圏との結合過程を明らかにすることを目指している。
5波長(427.8nm, 557.7nm, 630nm, 777.4nm, 844.6nm)フォトメータの観測を、平成29年9月から30年3月まで継続的に実施した。427.8nmと、557.7nmおよび630nmの発光の立ち上がりのタイミングを調べた結果、557.7nmは(従来言われている通り)約1秒遅れることが確認された。しかし、630nmの発光タイミングのズレは、数十秒遅れる場合と、ほとんどタイミングずれがないケースが見られた。朝側時間帯においてパルセーティングオーロラが発生している時に、すべての波長で、ほぼ同周期の変動が同期して観測された。この結果は、オーロラ発光を用いた降下電子エネルギー導出手法の確立にとって重要である。
過去6年間に置いて取得された約2200時間のNaライダーデータ(大気温度、大気風速、ナトリウム密度)を解析した。1晩あたり12時間以上データが取得されている80晩のデータを用い、どのような条件下で、下部熱圏・中間圏(高度80-110 km)にて、鉛直風が生起するかについて調べた。大気波動的な構造を示す例が4晩確認された一方で、半日潮汐波の振幅が強いケースの16晩で鉛直風は見られなかった。Sporadic Sodium Layer (SSL)との関連では、10晩でSSL近傍にて鉛直風が見られる一方で、5晩については見られなかった。オーロラ活動が活発な5晩で、鉛直風が見られなかった。今後、鉛直風の発生機構等についてさらに解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度、継続的にMFレーダーと流星レーダー観測が実施された。平成29年9月後半ー10月前半にかけて、ナトリウム(以下、Na)ライダーの整備を行い、平成30年3月中旬まで、断続的にNaライダー観測を実施した。Naライダーを約1310時間運用し、約519時間分の大気温度、大気風速、Na密度データを取得した。Naライダーシステムの改善を行い、従来の5秒積分・1分波長切り替え方式を改善し、2秒積分、20秒波長切り替え観測を実施して、時間分解能1分観測を実現した。5波長フォトメータの観測を、平成29年9月6日から平成30年3月22日まで継続的に実施した。デジタルカメラの画像イメージを用いて、フォトメータの視野方向をトロムソの沿磁力線方向に合わせた。世界的に見ても、このような観測は稀である。12月に、EISCAT UHF レーダーとの同時観測を5晩実施した。観測研究と並行して、60cm望遠鏡を用いた新受信システムの開発を進めた。システムを検討し、主鏡・斜鏡、筒等を購入し、開発・製作を進めた。ミリ波分光計を設置しているコンテナハウスで室温上昇問題が発生し、その対策のため、コンテナ改造を実施した。天井に排気口を新たに設置したことにより、ほぼ問題は解決され、ミリ波分光計の本格稼動の準備を整えた。
Naライダーデータを解析して、鉛直風の発生条件とSSL生成機構について研究を進めるとともに、各種レーダーデータを用いて極域下部熱圏・中間圏・電離圏にて生起する現象について研究を進めた。フォトメータにより取得された427.8 nmと630 nmの2波長オーロラ発光強度を用いた電離圏電気伝導度の導出手法の評価について、論文で発表した。
このように、トロムソにおける観測をほぼ順調に実施し、60 cm新望遠鏡システムの開発・製作を進め、解析研究により論文を複数発表したため上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
Naライダー、EISCATレーダー、5波長フォトメータ、流星レーダー、MFレーダー等により、これまで取得されているデータの解析をさらに進め、鉛直風および大気温度水平勾配についての研究を実施し、その結果を論文にまとめる。平成29年度に5波長フォトメータにより取得されたオーロラ発光データを用いて、オーロラ発光の時間変動についての成果を論文にまとめて、投稿する。
平成30年10月から平成31年3月にかけて、Naライダー、フォトメータ観測を実施し、新たなデータを取得する。9月後半から10月上旬にかけてNaライダーの整備を行い、フォトメータとともに、観測を開始する。それ以降、Naライダーは断続的に、フォトメータは継続的に平成31年3月ごろまで観測を実施する。EISCATレーダーとの同時観測を12月に複数晩実施する。特に、Naライダーにて、1分値ないし30秒値の高時間分解能データを取得して、オーロラ加熱に伴う、下部熱圏・中間圏(高度80-110 km)における大気温度変動・大気風速変動・鉛直風・Na密度変動に着目した観測研究を実施する。並行して、60 cm望遠鏡を用いた新受信システムの開発をさらに進め、名古屋大学でテスト観測を実施したのち、平成31年3月ごろにトロムソでの設置を目指して作業を進める。ミリ波分光計に関しては、定常観測に向けて整備を進め、冬ごろからの大気微量分子(NO, O3)の観測開始を目指す。MFレーダー、流星レーダーについては、定常観測を継続し、そのデータを用いて、大気波動に関する研究を進める。これらにより、目的達成に向けて、研究を進める。
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