研究課題
本研究は宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所で検討されているソーラーパワーセール(OKEANOS)への搭載を想定し、惑星間空間における電磁乱流・衝撃波の磁場を計測する小型軽量の機器の開発を目指した内容である。OKEANOSの母船からは一辺約40mの太陽電池薄膜が展開され、その四隅にはそれぞれ展開のための先端マスが配置される。先端マスの二つに本研究で開発するフラックスゲート方式磁場観測器を搭載する。一方で、平成29年度検討により、同じく宇宙科学研究所で実施を計画している火星衛星探査計画(MMX)のイオン質量分析器(MSA)の磁気方位判別機能のセンサ回路としても有効であることがわかった。MMX搭載MSAは、火星の衛星フォボスから飛翔したイオンを観測を目的とする。イオンは磁場の影響を受けて飛跡が曲がるため、MSAが観測したイオンがフォボス起源かどうか判別するために、小型軽量の磁力計が必要となり、MMXも本開発のターゲットに加わった。太陽風をモニタするWIND衛星が実際に取得した磁場データを元に、地球とは異なる太陽からの距離における太陽風磁場の疑似データおよび疑似ノイズを作成し、観測と機上較正のシミュレーションを行い、その結果を元に必要な仕様・性能の検討を行った。また、フラックスゲート磁力計のピックアップ信号を高精度でアナログ-デジタル変換するASIC回路設計の検討を開始し、業者の支援を受け、単一正弦波を入力した場合のシミュレーション検討を行った。出力信号の分解能(ノイズ)、線形性、周波数特性について評価し、それぞれ19bit、0.03%以上、60Hz以上を目標に設定した性能をほぼ満足する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
フラックスゲート磁力計のピックアップ信号を高精度でアナログ-デジタル変換するASIC回路設計のシミュレーション検討を行い、出力信号の分解能(ノイズ)、線形性、周波数特性について評価し、それぞれ19bit、0.03%以上、60Hz以上を目標に設定した性能をほぼ満足する結果を得た。一方で、このシミュレーションを検討する作業に伴い、これまで想定していた0.25プロセスでは、電源・温度・ASICプロセス等の条件を振った時に正確な性能評価が出来ないことがわかり、0.18プロセスで製造することに変更せざるを得なくなった。この変更は、次年度以降の作業計画や予算計画に影響する。
OKEANOSによる高時間分解磁場波形観測やMMX搭載MSAの磁気方位判別を達成するために、観測対象であるDC~10Hzの周波数帯の磁場をフラックスゲート方式磁場観測器により測定する計画である。・前年度に OKEANOS で実現すべき磁場観測器の性能を検討し、アナログ-デジタル変換に必要な性能として、分解能 19bit、信号帯域 60Hz 以上、非直線性誤差 0.03%程度以下という結論を得た。また、専門知識を持った業者の支援を得て、目標性能を達成するアナログ-デジタル変換 ASIC 回路の予備設計とTypical条件におけるシミュレーションを行った。今年度はアナログ-デジタル変換 ASIC 回路の最終設計を行い、電源・温度・ASICプロセスを変えた条件でのシミュレーションを行って性能を確認する。・OKEANOS 衛星システム全体のリソース削減のためには、磁場観測器の省電力化が必要となっている。本研究とは別に、研究協力者によって、小型・省電力の新方式の基本波型直交フラックスゲート方式の開発が行われている。先行研究で開発した、観測ロケット SS-520-3 搭載磁場観測器 DFG のセンサの信号処理 ASIC 回路の設計を元にして、基本波型直交フラックスゲート方式磁場観測センサの信号処理回路を開発する。・設計・シミュレーションしたアナログ-デジタル回路変換と、基本波型直交フラックスゲート方式磁場観測センサの信号処理回路を同梱した ASIC 回路をレイアウト設計し、製造する。試験基板回路を製造し、ASIC 回路の性能・機能を試験する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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