研究課題
アジアの造山帯において,侵食による地形発達と深層崩壊発生場についての研究を,主に野外調査を中心として実施した。眠江上流において地質・地形調査を行った。その結果,巨大な地すべり群が遷急点の上流への遡及によって発生したことが明らかになった。これらは,地質構造的に見ると,河川侵食によって足元を切断された流れ盤斜面に発生していた。SAR干渉画像によって,眠江上流地域の斜面の微小変位を観測し,2017年に新麿で発生した地すべりの余行的な動きを検出した。ヒマラヤを横断する大河川のカリガンダキ川流域において地質・地形調査を行った。その結果,カリガンダキ川中流から上流にかけて2つの顕著な遷急点が存在することが明らかになった。また,河川沿いに広く重力斜面変形が生じていること,深層崩壊も発生していることがわかった。台湾中央部の中央山脈において,地質・地形調査を行った。その結果,中央山脈の主たる構成岩石で広く分布するスレートには,河川侵食に伴って生じる重力による斜面変形が極めて一般的に存在することが明らかになった。紀伊山地において,実際に豪雨によって発生した深層崩壊地と周辺で綿密な地質調査を行い,深層崩壊が,付加体に固有の厚い破砕帯を持つ衝上断層に規制されて発生したものであることを明らかにした。流れ盤をなす衝上断層が河川侵食によって地表に近くなると,斜面が不安定化し,豪雨時に地下水圧が高まり,深層崩壊が発生することがわかった。これらの結果は,学術誌Island Arcに印刷中である。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ研究計画通りに研究を進めることができた。
当初の研究計画に従って研究を進める。研究対象地域は,中国眠江上流,ネパールヒマラヤ,台湾中央山脈,日本の西南日本外帯を中心とした造山帯。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 10件)
Landslides
巻: 14 ページ: 1901-1914
10.1007/s10346-017-0838-3
Journal of Nepal Geological Society
巻: 55 ページ: 151-157