研究課題/領域番号 |
17H02974
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
瀬戸 浩二 島根大学, エスチュアリー研究センター, 准教授 (60252897)
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研究分担者 |
香月 興太 島根大学, エスチュアリー研究センター, 講師 (20423270)
山田 和芳 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 教授 (60508167)
辻本 彰 島根大学, 教育学部, 講師 (60570554)
園田 武 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70424679)
酒井 哲弥 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (90303809)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 年縞 / 洪水イベント / 高密度ラミナ / CNS元素分析 / 粒度分析 / 藻琴湖 / 網走湖 |
研究実績の概要 |
亜寒帯気候に属する北海道東部オホーツク海沿岸の藻琴湖,網走湖には,年縞と考えられるラミナセットが見られる。この形成過程や年レベルの環境変遷を明らかにするため,設定したサブテーマに沿って調査・研究を行なった。 サブテーマ1;湖水濁度調査(1-1):セジメントトラップとメモリ式濁度計等を藻琴湖に設置して観測中である。湖沼および流域の珪藻群集調査(1-2):藻琴湖および流域の20地点において,採水・水質調査を行った。上流に向けて汚濁が減少する傾向が見られた。また,高塩分汽水の藻琴湖も含めて淡水に特徴的な珪藻群集が認められた。ラミナパターンの地域的変化(1-3):藻琴湖,網走湖のコアにおいてラミナ解析及びCNS元素分析を行なった。降水イベントによるラミナ形成過程(1-4):2015年と2016年において起った洪水イベントについて,17Mk-4SCコアを採取し,2.5mmまたは5mm間隔で解析した。藻琴湖では,2015年と2016年に特徴的な高密度ラミナセットが形成されている。CNS元素分析の結果,両高密度ラミナは洪水性ラミナの特徴を持っている。これらは,今後のキーベッドとして使える。2015年の高密度ラミナセットは,堆積物が厚く堆積しているのも関わらず,TOCを多く含んでいる。これは供給される砕屑物の中にTOCが含まれている可能性がある。その起源は流域の耕作土の可能性が高い。トータルとして2016年の降水量の方が多いが,2015年の方が厚く堆積した。洪水時の堆積は,降水の規模と共に流域の状態も考慮する必要があることを明らかにした。 サブテーマ2;2018年の冬季に18Mk-8Cコアを採取し、サブサンプリングおよびマイクロサンプリングを行なった。また,同時期に20m級ボーリングコアを採取した。 サブテーマ3;20m級ボーリングコアの13AB-B1コアの化学分析等を継続的に行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は,概ね当初の計画通り進んでいると考えている。初年度は主にサブテーマ1(ラミナの形成過程,ラミナ解析手法の確立,年層としてのラミナの定義に関する研究)を中心に調査研究することを目標とし,サブテーマ2(藻琴湖におけるラミナ解析および古環境解析)および3(網走湖におけるラミナ解析および古環境解析)は,サンプリングあるいは分析を継続的に行なうことを目標としていた。サブテーマ1では,継続して行なう調査・研究を除いて一応の成果を出している。その成果は,AGU Fall Meetingや汽水域研究会のスペシャルセッションなどで発表している。継続的に行なうものに対してもほぼ予定通り調査研究を行っている。サブテーマ2においては当初の計画通りコアリングを行ない,また,20m級のボーリングも行なえた。これらは来年度,分析や解析を行なう予定である。サブテーマ3については現在分析中であるが,ロングコアのため時間を必要とする。そのため,当初から来年度まで継続して分析するように計画していた。その計画に沿って進んでいるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,当初の計画通り進めていきたいと考えているが,若干の修正は行ないたい。サブテーマ1-1(湖水濁度調査)に関しては,継続的にセジメントトラップやメモリ水質観測を行い,来年度中に一定の成果を出す予定である。サブテーマ1-2(湖沼および流域の珪藻群集調査)においては,当初,調査は初年度だけ行なう予定であったが,来年度も同様な調査を行い,年ごとの違いを比較検討を行う予定である。サブテーマ1-3(ラミナパターンの地域的変化)に関しては,来年度中にまとめ,一定の成果を出す予定である。サブテーマ1-4(降水イベントによるラミナ形成過程)に関しては,サブテーマ2で行なう予定の網走湖のリミノスコアラーによる表層コアリングを利用して,藻琴湖と同様の観点から解析を行ない,洪水イベントの湖沼間の相違を明らかにする予定である。サブテーマ2に関しては,来年度中に成果を出す予定であったが,当初の想定以上に長いコアを採取できたので,もう半年延ばして解析を行ないたいと考えている。サブテーマ3に関しては,引き続き分析を行なっていく予定である。来年度中には分析を終了し,再来年度に予定していた解析に向けて準備を行なう予定である。また冬季に欠損した表層を補填するためのコアリングを行なう予定である。 これらの調査研究で得られた成果は,ほぼ計画通り地球惑星連合大会,日本地質学会,AGU Fall Meetingや汽水域研究会等で発表する。また,論文の執筆も計画通り行ないたいと考えている。
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