研究課題/領域番号 |
17H02977
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
對比地 孝亘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70597343)
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研究分担者 |
遠藤 一佳 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80251411)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 頸部 / 解剖 / 骨格 / 進化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究作業はまず,研究に用いる現生種標本の収集から開始した.具体的には,原始形質の確認のために,頸部を持たないいわゆる魚類(ハイギョ類Protopterus, サメ類)などを得て,ProtopterusについてはCTスキャン撮影を行い頸部骨格データを収得し,コンピューターでて3Dデジタル観察を行った.また,頸部と胴部の境界が明瞭に認識できる派生的特徴を持つ有羊膜類として,哺乳類の中では比較的原始的な有袋類のMonodelphisを入手し,また特殊化した例としてのヘビ類の標本も得た. 化石標本については,茨城県立自然史博物館から,頸部の分化前の状態を示すデボン紀の肉鰭類Eusthenopteron及びジュラ紀のサメ類Hybodusの標本を借用し,頭部から脊柱にかけての部位についてCTスキャン撮影を行った.また,頸部が極端に退化傾向にある魚鰭類の中で,最も初期のものの一つであるUtatsusaurusの標本を北海道大学博物館において観察した.また,より派生的なジュラ紀の魚鰭類Ichthyosaurusの標本を茨城県立自然史博物館から借用し,CTスキャン撮影を行った.これらのCTスキャンデータについては,本研究費で購入したソフトウエアAmira及びコンピューターを用いて3Dデジタル構築を行い,その骨格形態の観察を行った. 発生学的研究については,まず組織切片観察用の透過型顕微鏡を購入・整備した.爬虫類の繁殖に関しては,飼育場所及び用品の整備等にとどまり,胚を得るまでには至らなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請研究初年度であったため,研究設備(透過型顕微鏡,デジタル3Dl構築用ソフトウエア及びコンピューター)の購入及びセットアップに予想以上の時間がかかった.解剖やCTスキャン撮影に用いる現生標本の入手はある程度進んだが,予定していた,ルゴール染色を用いた軟組織コントラスト強化CT撮影(diceCT)に適当な,比較的小型の個体が入手できなかったため,CT撮影では骨格形態のみのデータを得るにとどまった. 化石の標本に関する観察やデータ収集に関しては,手始めに本邦で観察できるものから開始した.計画ではヨーロッパの博物館に長期滞在してデータを得るはずであったが,教育関連の出張などのため,そのためのまとまった時間が取れなかったことが原因である. 発生学的な側面については,胚を得るまでに至らなかったことが最大の原因である.本研究室ではこれまで化石と遺骸のみを扱ってきたため,生体飼育のための経験に乏しい.そのためまず爬虫類の飼育に関する文献を収集し,それに基づいた学習を進めてきたが,実際に繁殖させるまではできなかった.
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今後の研究の推進方策 |
成体の解剖学的観察については,すでに入手した標本の解剖を進めるとともに,小型の個体の入手の努力を続け,組織コントラスト強化CT撮影を行うことにより,軟組織からなる器官の位置関係に関する解剖学的データを得る. 発生学的側面の研究については,引き続き爬虫類(コーンスネークとヤモリ類)の飼育を進め、胚入手を試みる.また,自ら繁殖を試みるだけでなく,日本蛇族研究所(群馬県)などから,すでに胚を持っているメスのシマヘビを入手し,それらに卵を産ませることにより,胚標本の作成を行う.一方,鳥類の胚については,新顎類のニワトリの発生過程との比較のため,古顎類エミューの受精卵を購入し,発生を進ませつつ順次胚標本を作成していく予定である.また,9月,10月の二ヶ月間,米イェール大学に滞在し,新進気鋭の進化発生学者Bahrt Anjan Bhullar助教の元で,爬虫類胚の観察及び実験技術を学んでくる予定にしている.特に日本では入手の困難なワニ胚を中心に観察を行うことを目標にしている. 化石標本については,秋から冬にかけて,昨年度訪問を果たせなかったヨーロッパにおいて初期の四肢動物形類の観察を行うのに加えて,米The Field Museumなどで初期の有羊膜類Diadectesなどや単弓類の観察を行っていく.
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